このあいだの休日、「部屋を片付けなければ」と思いつつ、やる気が全く出なくて。なかなか動き出せず、かなりの時間を無駄にしてしまいました。ストレスを減らすためにも、やるべきことを先延ばしにはしたくないのですが……。

「やらなければいけない」と思うほど、なぜかやる気が起きないときってありますよね。「〜しなければいけない」という“やるべきこと”に追われる毎日を送る人にとって、どうすればやる気が出るのかは重要なテーマでしょう。今回は、やる気が出ないときの対処法をご紹介します。

「やる気を出そう!」と無理やり自分を奮い立たせようとしても、簡単にうまくいくことは少ないかもしれません。

やる気を出すには気力に頼るのではなく、やる気が出ない理由にアプローチして、行動に移すきっかけをつくる必要があるからです。自分を動かしたいとき、これからご紹介する方法を参考にしてみてください。

なぜかやる気が出ない、その4つの理由

やる気は「物事をやり遂げようとする積極的な気持ち」と定義されます(※1)。これまで心理学や脳科学の分野で、やる気についてのさまざまな研究が行われ、やる気が出ない理由やメカニズムが解明されてきました。やる気が出ない理由はいくつかありますが、代表的なパターンは次のとおりです。

(1)健康状態が優れない

睡眠不足や適切な食事が摂れていないなど健康状態が優れないとき、やる気を出せないことがあります。その理由を説明するときによく登場するのが、心理学者アブラハム・マズローの「5段階欲求説」です(※2)。これによれば、人間の欲求をピラミッド型で表すと次のようになります。

マズローの5段階欲求説

このなかで、人間は段階を上がり続けようと行動するそうです。そして、低層の欲求が満たされることで、上層を目指せるようになります。例えば、「安全の欲求(心身ともに健康で、経済的にも安定した暮らしをしたい)」を満たそうとするとき、「生理的欲求(睡眠欲や食欲など、生きていくために必要な基本的・本能的な欲求)」を満たしている必要があるのです。

そのため、上位4段階の欲求を満たすために行動する(例えば、安全の欲求を満たすためにランニングする)には、生理的欲求を満たしていることが不可欠です。にもかかわらず、健康状態が優れないと、生理的欲求を満たせません。その結果、上位の段階を上がり続けるためのやる気を出せないのです。

(2)燃え尽き症候群 (バーンアウト)

とことん何かに取り組んだあと、まるで燃え尽きたかのように、突然やる気を失うことがあります。いわゆる「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と呼ばれる状態です。

精神科医のユン・ホンギュン氏によれば、肯定的な見返りがあり、やりがいを感じていることでも、それを続ける体力は3〜7年しか続かないといいます(※3)。そのあいだ、自分が燃え尽きていくことに気づかない人がいるそうです。そして、やる気を起こす力が枯渇してしまい、力を出したくても出せなくなります。

(3)無力感に支配されている

やる気が起きないのは「学習性無力感」に陥っているせいかもしれません。学習性無力感とは心理学者のマーティン・セリグマンが発表した現象で(※4)、抵抗や回避ができないストレスに長期間さらされた結果、不快な状況から逃げようとする行動をしなくなることを指します。

例えば、昇進しようと懸命に取り組んだ仕事で、期待どおりの成果を得られないことが続きました。その結果、「努力しても報われない」と思い込むようになり、目の前にチャンスがやってきても「無理だ」と消極的になります。自分には目標を達成する能力がないと感じてしまうのです。セリグマンは学習性無力感に苦しむ人は珍しくなく、なかには重症な人もいることを示しました(※5)。

(4)うつ状態になっている

うつ病が原因で、やる気を出せない人もいます。目的や目標などのある要因によって行動を起こし、それを持続させる心理的過程は「動機付け」と呼ばれています。うまく動機付けができると、やる気を引き出せるとされています。

しかし、心理学者のマーティン・セリグマンは、うつ状態により動機付けが阻害されることを示しました。(※6)うつ病になると、抑うつ気分(気分が落ち込んだり、憂うつな気分になったりする)に陥るだけではなく、やる気が出なくなることもあるのです(※7)。

うつは誰でもなる可能性のある症状ですが、とくに真面目な人ほどなりやすいといわれています。真面目な人は、自分を責めすぎてしまう傾向があるためです。うまくいかない状況をすべて自分のせいだと考え、罪悪感や無力感でいっぱいになってしまうと、やる気を出せなくなります

やる気が出ない理由は1つだけではなく、さまざまなケースが考えられるんですね。昨日と今日では、やる気を出せない理由が違うかもしれない。「自分は今、どのような状態にいるのか」を理解することが大切なのかなと感じました。

そうだと思います。今の状態によって対処法が変わるので、できるだけ多くの対処法を知ることが大切です。次に、やる気を出す方法をいくつかご紹介しますね。

自分のやる気を取り戻す!気軽にできる4つのコーピング

意欲が低下してやる気が出ない状態は、心にストレスがたまっているサインです(※ 8)。心理学では、ストレスのもとにうまく対処しようとすることを「コーピング」と呼びます(※ 9)。

コーピングにはいくつかの種類があり、自分の性格やそのときの状況によって有効な方法が変わります。元気なときにコーピングのレパートリーをできるだけ増やしておき、場面に応じて使い分けましょう

なお、Awarefyというアプリでは、自身にあったコーピングを登録しておき、その実施した感想や効果などを保存し、意識して実施したり振り返ったりできるサービスがありますので、そうしたアプリを活用してみるのもいいかもしれません。

さて、ここからは、日常生活のなかで気軽にできるコーピングをご紹介します。

(1)休養

ストレスに対して、有効な方法の一つとしては休養をとることです。うつ病などの治療でも、まずは休養を勧められることも多くあります。

精神科医のユン・ホンギュン氏によれば、燃え尽き症候群の人も、しばらく休むことで解決することがほとんどだそうです(※3)。無気力状態から抜け出したければ、食事をしっかりと摂ったり、週末だけでも完全に休んだりすることを心がけます。

また、一口に「休む」といっても、その方法はさまざまです。一人きりでゆっくり過ごす、家族と一緒に楽しく過ごす、よく眠る、ソファでゴロゴロする、散歩するなど、自分が心身ともにリラックスできそうな方法を試してみましょう。

(2)自己コントロールされた回避

自分にとって困難なことが現れたら、それを回避するのも手です。一時的に問題から目をそむける、または問題が生じていないように対応し、ゆとりができたら改めて取り組みます

不安が続く状態で、多くの人はゲームや過食などの繰り返すことが簡単な「回避型のコーピング」を選びがちです。しかし、やり過ぎると「何かすると、よくない結果になるはずだ」という絶望感や「どうせやってもダメだからやらない」という無気力につながる恐れがあるので注意しましょう。

それを防ぐためには、自己コントロールを心がけることです。例えば、問題から目をそむけるためにスマホゲームをする場合、制限時間を決めておきます。そして、時間になったらスマホから手を離し、代わりに体を動かすなどのよりストレス軽減に効果的な方法を実践することです。

(3)if-thenルール:「こうしたら、これをやる」と考える

「Y(ある目標を達成するための行動)をする」と決心するのではなく、「X(Yに取り掛かるきっかけ)をしたら、Yをする」という実行計画を決めて取り組む方法もあります。これを「if-thenルール」といいます。

ニューヨーク大学の心理学者ピーター・ゴルヴィツァーの研究では、if-thenルールによって目標達成率が4割以上向上することが示されました(※10)。目標達成につながりやすいのは、XをしたときにYへと自然に意識が向き、強い意志をもたなくても行動しやすくなるからです。if-thenルールは、次のように日常生活で取り入れることが可能です。

<if-thenルールの具体例>

  • 自宅でプレゼン資料を作りたい→「ニュースを見終わったら、資料を作成するぞ」
  • ジムでの運動を習慣化したい→「朝はコーヒーを飲み終わったら、ジムに行くぞ」
  • 読書を習慣化したい→「電車に乗ったら、本を開くぞ」など

このようにルールを決めることで、次にすべきことで迷わなくなります。行動が習慣化され、目標達成につながるのです。

(4)アクティベーション

体を動かすことで、やる気を引き出す方法(=アクティベーション)もあります。

免疫学者の安保徹教授によれば、人間は心と体の状態を活発にする「交感神経」が優位な状態だと、活動的で前向きな気持ちになりやすいそうです(※11)。一方、心と体を休ませる「副交感神経」が優位な状態だと、やる気を出せないことが多くなります。

そんなときは、軽い体操やジョギングなどで交感神経を高めて、心を動かしましょう。体を思い切り動かすだけではなく、人と話す、速く呼吸をして心拍を上げる、声を出すことなども、アクティベーションでは効果的だとされています。

脳研究者の池谷裕二教授も「体を動かすから、やる気が出る」と述べています(※12)。脳研究の結果から、意欲は脳の中に見つからず、やる気は「出して!」と言われても出せるものではないそうです(※13)。脳の支配下に体があるのではなく、体が脳の主導権を握っているとも言え、そのため、行動することによって、脳がやる気を出せるという仕組みとのことです。

他人のやる気スイッチを押す!周囲への有効な働きかけ3つ。期待、称讃、目標設定。

これまでは自身のやる気を上げる取り組みでしたが、家族や同僚、部下など、周囲のやる気を引き出したい場面もあるはずです。とはいえ、「やる気を出して!」と言っても効果がなければ、どのようなアプローチをすればいいのでしょうか? 次の方法を試すことができます。

(1) 期待していることを伝える

周囲のやる気を引き出す方法のひとつが「相手に期待すること」です。

アメリカの教育心理学者R・ローゼンタールは、教師と小学生を対象にした実験で、教師から期待された生徒は成績が向上することを示しました(※14)。教師が「この生徒は本気で能力がある」と信じて期待のこもった眼差しを向けると、多くの生徒は期待に応えようと行動します。その結果、成績が上がったという主張です。これは上下関係のあるなかで発生する現象で、「ピグマリオン効果」と呼ばれています。

愛知学院大学の西田保教授が行った研究でも、その効果が示されました(※15)。体育の授業中、指導者が期待を高めるような発言を多くしていたクラスでは、学習意欲が高くなったのです。

この現象を活用すれば、周りのやる気を引き出すことに役立ちます。例えば、子どもにお手伝いを頼みたいときです。「〜しなさい」と指示するのは逆効果です。指示されて、「自由に行動できる権利を制限された」と感じると、反発心を覚えて意欲を失うことがあります。自分には自由があることを確認するために、自分の意見に固執したくなるからです。この状態を「心理的リアクタンス」といいます

指示するのではなく、期待していることを伝えましょう。例えば、「食器洗いが得意そうだから、お願いしてもいい?」と期待していることを伝えます。子どもはその期待に応えようと、家事にやる気を出してくれるはずです。

(2) 褒める

うまく褒めることで、やる気を引き出せることがあります。

やる気を引き出そうと、「ピグマリオン効果を期待して相手を褒めよう」と考える人がいるかもしれません。しかし厳密にいえば、期待を伝えることと褒めることは意味合いが異なります。期待を伝えることは未来に対する行為ですが、褒めることは結果などの実際に起こった過去に対する行為だからです。区別して考えたほうがいいでしょう。

また、褒めるときは効果的な方法をとらないと、やる気を引き出せません。教育研究者のドーソン・ハンコックは、次の2つのルールを意識することで、より大きな効果をもたらすとしています(※16)。

<ルール1:事前に評価基準を伝えておく>

例えば、部下に「会議で積極的に発言することが大切(=評価基準)」と伝えておきます。そうすれば、部下はどうすれば評価されるかわかるので、やる気を出しやすくなるからです。部下が評価基準をクリアしようと行動したら、「積極的に発言できていたね」「発言しようとする意欲が伝わったよ」などと褒めます。

<ルール2:相手が行動を起こした直後に褒める>

相手が行動を起こした直後に褒めましょう。しばらく時間が経ってから褒めても、相手はその実感が湧きづらく、褒めの効果が薄くなるからです。褒めるタイミングにも注意してください。

(3) 達成動機の強さに応じて、目標設定の難易度を調整する

効果的な目標設定を行い、相手のやる気を引き出しましょう。そのために、相手の「達成動機」の強さを確認します。達成動機とは、わかりやすくいえば、目標を成し遂げようとする気持ちのことです。

アメリカの心理学者ジョン・ウイリアム・アトキンソンは「達成動機理論」を提唱しました(※17)。人間は「達成動機」だけではなく、「失敗回避動機(失敗したくない気持ち)」も持っているそうです。そのどちらの傾向か強くなるかで、次のとおり効果的な目標設定の仕方が決まります。相手の個性に合わせて、目標設定することが大切です。

2つのタイプ、それぞれに効果的な目標設定の例が下記となりますので、参考にしてみてください。

●達成動機が強いタイプに有効な目標設定

チャレンジのしがいを求める。成功確率50%程度の勝負で挑戦的になる。

(効果的な目標設定)
チャレンジのしがいを求めるため、功確率が極端に低いか、誰にでもできるような目標では、やる気を出しづらい。やる気の出る、成功確率50%程度の難易度で目標設定をする。

失敗回避動機が強いタイプに有効な目標設定

チャレンジが苦手。成功確率50%程度の勝負で逃げようとする。

(効果的な目標設定)
チャレンジが苦手なので、成功確率50%程度の目標では、やる気を出しづらい。
今の実力なら実現できそうな成功確率が高い目標、または、「失敗しても仕方ない」と思える成功確率が低い目標だと積極的に取り組む。

やる気が出ない原因と、自分と周囲のやる気を取り戻す方法

いかがでしたでしょうか?

やる気を出すのに、気合い頼みをするのではなく、心理学や脳科学の観点から、いくつかのやり方を紹介してみました。もちろん、これ以外にも、様々なやり方があるかと思いますが、ぜひ自分に合ったやり方を身につけると、良いのではないでしょうか。

これまでは、「自然な気持ちに任せて、やる気が出る瞬間を待つしかない」と思っていました。でもほんとうは、コーピングを試してみたり、周囲が動きたくなる働きかけをしたりする必要があったんですね。

はい。そうして、やる気を出すことができれば、忙しい毎日のなかでも時間を有効に使うことができるでしょう。密度の濃い時間を過ごせるように、「やる気のスイッチ」を見つけて、動き出すきっかけをつかんでくださいね。

監修:藤本 志乃(ふじもと しの)
臨床心理士・公認心理師・マインドフルネス瞑想講師

教育相談、医療機関での活動を経て、2020年にウェルビーイングのためのカウンセリングルームLe:self(リセルフ)オープン。気軽な心ケアとより良い生き方をコンセプトに、マインドフルネス、ACTのワークショップ・イベントを一般・企業向けに開催している。
H P https://leself.jp

<参考文献>

※1:若崎ら(2003)、卒業研究における学生の「やる気」の要因 : グループ研究の場合
※2:マズロー「自己実現」の誤解と「ありのまま」
※3:精神科医が教える「燃え尽き症候群」に陥りやすい人の共通点
※4:学習性無力感とは?〜「何をやってもムダ」にならないための2つの対策
※5:学習性無力感の改善法!やる気を引き出す簡単なテクニック
※6:学生のネガティブな反すう思考と劣等感および自尊心との関係 -「やる気」理解のための一考察-
※7:岡村ら(2011)、うつ病のメカニズム
※8:介護現場のためのストレスマネジメント支援テキスト(第2章:ストレスのしくみと対処法)
※9:淑徳大学、ストレス解消、どうしていますか?:実践心理学科からのメッセージ(2)
※10:目標設定のコツ「if-thenルール」とは 、設定方法や3つのメリットを紹介
※11:意外に忘れられている事実=「脳はからだの一部」
※12:池谷裕二が指南!やる気が出る「脳」のだまし方
※13:やる気は脳ではなく体や環境から生まれる──「環境に存在する意欲」の捉え方──
※14:パーソル総合研究所、ホメは人の為ならず~褒めることの効果~
※15:矢澤久史(2017)、言葉
※16:相手を操る、極上の「褒め方」を心理学者が解説!【独立に役立つ心理学・第18弾】
※17:達成動機理論とは?目標設定における重要なポイントを紹介


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