今回は言葉はよく聞くけれど、その意味は意外と知られていない「メタ認知」がテーマです。

「ものごとを客観的にとらえること」「俯瞰して見ること」といった漠然としたイメージはありますが、説明しろと言われると…。

ですよね。少しわかりにくい概念ですが、「メタ認知とは何か」という基本から、仕事や学習への活かし方、アプリを使って「メタ認知力を高める方法」まで学んでいきましょう!

「頭を働かせた行動全て」を、一段上からとらえる

心理学では「メタ認知」とは、「認知についての認知」を意味します。「認知」とは、人間が頭を働かせて行う行為全てのこと。見る、聞く、書く、読む、話す、記憶する、思い出す、理解する、考えるなど、頭を働かせること全般を指しています。そして「メタ」とは、「高次な」「一段上から」という意味の言葉。

つまり「メタ認知」とは、自分自身や他者による「頭を働かせた行動全て」を意識して、「もう一段上からとらえる」ことを意味しています。

例えばあなたは、「小学生に何か説明する時に、大人相手と同じ説明では伝わらない」ということを知っていますよね。また、「人は時に判断を誤ることがある」ということも、経験則から知っています。このような「認知についての認知」が「メタ認知」なのです。

「メタ認知」という概念はどのように生まれたのか

「メタ認知」は、アメリカの心理学者ジョン・H・フラベルが1970年代に定義し体系化した概念で、元は認知心理学で使われていた用語です。

その一方で、「メタ認知」に近い考え方は、人間の思考のメカニズムを解明しようとする人たちの中で、はるかに昔から注目されてきました。

例えば紀元前5世紀頃、古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、「自分がいかにわかっていないかを自覚したものこそが、最も知恵のある者である」と考えました。これがかの有名な「無知の知」という考え方です。ソクラテスは、そのことを証明するため、アテネの街で、知識人と言われる人を相手に次々と議論を仕掛けていきました。これは、「自分はわかっているつもりであったが実は無知であった」ということを気づかせるためだったと言われています。

この「無知の知」はまさにメタ認知と言えるもので、ソクラテスはメタ認知こそが本当の知恵だったと考えていたのではないでしょうか。(※1)

認知についての知識「メタ認知的知識」とは

ここからは、より深く「メタ認知」について学んでいきましょう。

メタ認知の概念は、「メタ認知的知識」「メタ認知的活動」の2種類に分けられ、そこからさらに細分化され整理されています。

まず、「メタ認知的知識」について説明していきます。「メタ認知的知識」とは、人間の認知についての知識全般を指します。つまり、認知についてわかっていることです。

これはさらに以下のように3つの要素に分けることができます。

①人間の認知特性についての知識

「人間の認知特性についての知識」とは、人間の認知についての知識を指します。例えば、「一度に多くのことを言われても覚えられない」「思考は感情に左右されやすい」などがこれに当たります。さらにこの知識の中には、「私は漢字を覚えるのが得意だ」「私は論理的思考が苦手だ」といった、とりわけ自分自身における認知の特徴についての知識も含まれています。

②課題についての知識

「課題についての知識」とは、「繰り上がりのある足し算は、繰り上がりのない足し算よりも間違えやすい」「英文が長くなるほど、和訳にはミスが増える」などといった、課題の内容が、人の認知活動にどう影響するかの知識を指しています。

③課題解決の方策についての知識

「課題解決の方策についての知識」とは、「英語はまずは文法を理解してから、単語を勉強した方が効率的だ」「計算ミスを防ぐには、検算が役立つ」などといった、課題をよりスムーズにこなしていくための方策、工夫に関する知識を指しています。

「課題についての知識」や「課題解決の方策についての知識」は、仕事や勉強にも役立ちそうですね!

そうですね。無意識には役立てているのだと思いますが、意識するとさらに活用できそうですね。

モニタリング&コントロールする「メタ認知的活動」

メタ認知は「メタ認知的知識」と「メタ認知的活動」に分けられ、「メタ認知的知識」とは人間の認知についての知識全般を指すということを学びました。では「メタ認知的活動」とはどのようなものなのでしょうか。

「メタ認知的活動」とは、自分の認知活動をモニタリングしたり、判断や行動をコントロールすることを指します。「あの人の名前が思い出せない」「突然よい考えが閃いた」など、認知に関する気付きを経験されたことは、きっと誰にでもあるのではないでしょうか。また、「予備知識のない人にも分かるように伝えよう」「説明で用いる例を変えてみよう」など、他人の認知能力を想定して、目標設定や修正を行なった経験もあると思います。このようなことが「メタ認知活動」と呼ばれるものです。「メタ認知活動」も2つの要素に分けられますので、それぞれ順番に見ていきます。

①「メタ認知的モニタリング」

「メタ認知的モニタリング」とは、文字通り認知状態を監視・点検することです。例えば、「ここがよく分からない」「ここはなんとなく分かる」といった認知についての気付きや感覚を指します。「この課題なら、だいたい30分くらいで出来るだろう」といった予想もこれに当たります。また、「この課題はこの解き方でよいのか」といった認知の点検、「この部分が理解できていない」といった認知の評価も「メタ認知モニタリング」の一種です。

②「メタ認知的コントロール」

「メタ認知的コントロール」とは、認知状態を自分で操作することです。例えば、「この課題を完璧に理解しよう」といった認知の目標設定、「まずは簡単なことから始めよう」といった認知の計画、「この考え方ではうまくいかないから、他の考え方をしてみよう」といった認知の修正がこれに当たります。

「メタ認知活動」は、事前段階、遂行段階、事後段階と、時系列で3つに分けてとらえることもできます。

「メタ認知的モニタリング」で言えば、事前段階に「課題の困難度の評価」や予想」をし、遂行段階で「困難度を再評価」したり、「課題遂行の方策を点検」して、「予想と実際のずれ」を感知。事後段階で、「課題達成度の評価」や「成功・失敗の原因を判断」します。

「メタ認知的コントロール」で言うと、まず事前段階で「目標設定や計画」「方策の選択」を行ないます。そして、遂行段階で「目標、計画の修正」「方策の変更」などを行ない、事後段階で「目標の再設定、再計画」「方策の再選択」を行うわけです。

仕事での「メタ認知能力」の活かし方

では、実際の仕事の場面で、「メタ認知」はどう活かせばよいのでしょうか。

その活用方法を3つに分けて見ていきましょう。

1)失敗や課題についてのメタ認知

与えられたタスクについて、自分がミスをしやすい傾向を知っていれば、その部分により慎重に取り組むことができます。また、何か問題が生まれても、解決につながる知識をあらかじめ知っていれば、スムーズに業務をこなし、より高いレベルで結果を出すことができるはずです。

2)コミュニケーションにおけるメタ認知

例えば、「一度に多くのことを言われても覚えられない」という人の特性を意識していれば、自ずと丁寧な説明をするという行動につながります。「大勢の先輩社員の中で後輩は意見を言いにくい」などの特性を意識していれば、後輩を慮り、人材育成にも役立てられるはずです。
自分自身の特性についても、「私は年上の男性とのコミュニケーションが得意だ」「私は会議でプレゼンするのが苦手だ」などと、メタ認知で特性を把握していれば、そういった場面での対策をあらかじめ計画しておくことができます。

3)自分の仕事ぶりについてのメタ認知

仕事上のタスクを、「どれくらいの時間で終わらせられるのか」と予想して目標を設定したり、業務が始まってからも、「今行っている方法よりも、より効率的に終わらせる方法はないか」と点検して適宜修正したり、「この方法ではうまく行かないからほかの方法に変えよう」と修正していくなど、自分が今やっていることを点検し、行動を変えていくことができます。

日常的に「メタ認知」を無意識に活用している場面もありそうですが、常にこの意識がけができるとより良くできるところがありそうです。

「メタ認知」を常に意識できると、ただ仕事ができる人ではなくて、周囲に理解のある人格者にもなれそうですね。

学習での「メタ認知」の活かし方

学習においても「メタ認知」を活かすことができます。人が何かを学ぼうとする際には、必ず学ぶ目的や動機があります。「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「どれくらい時間をかけて学ぶか」を、無意識に自分で考えて選択しているはずです。さらに学んでいる間にも、自分の目標とするレベルまで学べたかを確認し、不十分と判断した場合は、さらに学ぼうとしますよね。

このように本人が目標に向かってメタ認知を働かせながら能動的に行う学習は「自己調整学習」と呼ばれ、昨今非常に重要視されています。

「自己調整学習」のためには、大前提として、誰かにコントロールされるのではなく、学習において自分が主体であることが重要です。学習の対象や範囲、学習の進め方、時間配分など学習における自由度が高まるほど、学習の主体性も高まるのです。

平成29年に公開された『新学習指導要領』にも、教育の三本柱の1つとして「自己調整学習」が「学びに向かう力・人間性等」として記されており、その文章中には「メタ認知に関わる力を含む」とはっきりと書かれています。(※2)

学習には、知識や技能を習得する力、推論や問題解決をする力など、多種多様な能力が必要です。
学習を効率的に進めたり、より深い学びを得るために、「メタ認知」は不可欠なものと言えるのではないでしょうか。

「メタ認知」が様々なところで役立つということがわかりました。トレーニングの方法も知りたいです。

ここからはその方法をご紹介します!手法をピックアップしてみました。

メタ認知を育てる3つの方法

メンタルウェルネス・アプリ「Awarefy」で取り組めるものをご紹介していきます。

①セルフモニタリング

セルフモニタリングとは、1970年代に心理学者 マーク・スナイダー氏によって定義された、自己観察または自己監視のための手法です。

セルフモニタリングでは、心が揺れ動いた時に、自分がどう考えたか、どう振る舞ったか、その時の気分はどうかなどを記録することで、自分に対する気付きを得ていきます

具体的には、日常で心が揺れ動いた出来事を、「状況」「思考」「気分」「行動」「体の反応」の5つの視点から紙に書き起こすことで、自分の状況を客観的な事実として捉えていきます。以下に例を示します。

1.状況:兄が自分の大切にしていたものを勝手に捨ててしまった。

2.思考:なぜ捨てたのか。なぜ事前に確認してくれなかったのか。

3.気分:怒りで今にも爆発しそうな気持ち。

4.行動:自分の怒りを一方的に伝えて電話を切った。

5.体の反応:体温が上昇している。眉間にしわが寄っている。

このように書き出していくことで、出来事を客観的に見て、「不快な考え」から「快適な考え」へと変えられる行動はないのかと探していくのがセルフモニタリングの目的です。セルフモニタリングで自分をモヤモヤさせる認知の仕方に気付いて、適切な対処行動へ自分を導くことができれば、感情の波を小さくして、気持ちを楽に過ごすことができます。

モバイルアプリ「Awarefy」の感情メモ機能

②ジャーナリング

ジャーナリングは、「一定時間、頭に浮かぶことを紙に向かってひたすら書くだけ」という、非常に簡単なトレーニングです。自分の心の内を紙にひたすら書き、自分の認知や深いところにある考えに向き合うことで、心身ともによい効果が得られるといわれています。

テキサス大学の社会心理学者、ジェームズ・ペネベイカー教授がジャーナリングの原型ともいえる筆記療法を確立させ、現在までに様々な調査でジャーナリングによってストレスやモヤモヤ・気分が改善することが証明されています。(※3)

では、具体的な実践方法をご説明しましょう。ペンとノートを用意し、そこに思い浮かんだことをひたすら書くのですが、実践の際には下記の5点のポイントを押さえておいてください。

1.あるテーマについて決められた時間ずっと書き続ける

2.頭で考えずに手を動かす

3.気をそらされるものがない、プライベートな空間で行う

4.脚色しないで、事実や気持ちをあるがままに書く

5.誤字や脱字を気にしない

こうして書いた紙を見ることで、自分の思考や感情を深く理解していくことができます。(※4)

ジャーナリングを実践する際は、就寝前やお昼休憩などタイミングを決めて、習慣化するのがおすすめです。一定期間のジャーナリングが溜まるとより状況を俯瞰して見られ、効果が上がっていきます。

モバイルアプリ「Awarefy」では、アプリ上でジャーナリングを行うことも可能です。

モバイルアプリ「Awarefy」のつぶやきメモ機能

③マインドフルネス瞑想

マインドフルネスは、もともとは、1970年代にストレス解消法の一種としてマサチューセッツ工科大学の生物学者ジョン・カバット・ジン博士が、日本の禅の瞑想を元に、宗教色をなくして、組み立てたものです。

その後、脳科学の発展と合わせて研究が進み、今や科学的な裏付けがあるものになっています。Googleやゴールドマン・サックスなどの大企業の研修でも使われるようになってから世界的に広まりました。

その内容を簡単に言えば「“今ここ”に意図的に意識を向け、価値判断をせず、ありのままに受け入れている状態になる」ということ。過去の後悔や未来への不安に囚われずに、“今ここ”だけに意図的に意識を集め、感じる必要のないストレスに心が占領されないようにするのです。

具体的に、「マインドフルネス」瞑想の方法を説明しましょう。様々な方法があるのですが、ここでは一番基本的な「マインドフルネス呼吸瞑想」を3ステップでご紹介します。(※5)

1.椅子または床に座る

座り方に決まりはなく、椅子に座っても床にあぐらをかいてもOK。深い呼吸ができるように、背筋が伸ばせる座り方で座りましょう。

2.ゆったりと自然に呼吸する

スムーズな呼吸をするため、背筋を伸ばし、胸郭を上げ、楽な姿勢になります。堂々とした山に自分がなるようなイメージで。

3.呼吸に意識を集中する

まず深呼吸を3回してから、呼吸を自然に行います。この時、鼻や器官に流れる空気、肺やおなかの動きなどに注意を向け、空気が入ったり出たりすることに意識を集中させてください。途中で気が散っても、いったんそれを認めて受け止めてから、ゆっくりと呼吸に意識を戻しましょう。

簡単なように感じるかも知れませんが、呼吸に意識を向け続けるのは、やってみると案外難しいものです。毎日少しずつでも行うことに意味があるので、ぜひ5分でもいいので続けてみてください。

すぐさま変化が現れるといったものではありませんが、やり続けていくことで「集中力が上がった」「感情のコントロールをしやすくなった」「適切な状況判断ができるようになった」などの変化をが期待できると言われています。(※6)

モバイルアプリ「Awarefy」の音声ガイド機能

これら3つの方法に共通するのは、自分を一段階上から捉える視点を持つトレーニングになるということです。こうした方法を通して、メタ認知を育んでいってはいかがでしょうか。

メタ認知とは?というところから、活かし方、トレーニング方法まで学んできました。いかがだったでしょうか。

知っているようで実はよくわかっていないメタ認知という概念を理解できました。「常に俯瞰してみるもう一人の自分」を作ることを意識してみたいと思います。

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監修:藤本 志乃(ふじもと しの)
臨床心理士・公認心理師・マインドフルネス瞑想講師

教育相談、医療機関での活動を経て、2020年にウェルビーイングのためのカウンセリングルームLe:self(リセルフ)オープン。気軽な心ケアとより良い生き方をコンセプトに、マインドフルネス、ACTのワークショップ・イベントを一般・企業向けに開催している。
H P https://leself.jp

監修:山本 隆一郎(やまもと りゅういちろう)
江戸川大学 社会学部人間心理学科 准教授・江戸川大学睡眠研究所 研究員

博士(人間科学)、公認心理師、臨床心理士、専門健康心理士。早稲田大学人間科学部に入学後、同大学大学院の修士課程・博士後期課程に進学。日本大学医学部公衆衛生学分野専修研究員、上越教育大学大学院学校教育研究科臨床・健康教育学系において助教、講師、准教授として勤務し、2016年4月に江戸川大学に着任。研究のかたわら、臨床心理士として心療内科を中心に心理臨床活動を行う。現在は、江戸川大学睡眠研究所の研究員、心理相談センターでの相談員としても活動。