仕事に対するモチベーションが低い、本番に向けてモチベーションを高めたい……。そのように、ビジネスやスポーツの世界では「モチベーション」という言葉がよく使われます。しかし、「じゃあ、モチベーションって一体何なの?」と聞かれたら、はっきりと言葉にできる自信がありません。

そういう人は少なくないと思います。モチベーションを正しく理解することは、やる気を引き出すことにつながります。今回は、モチベーションについて深く掘り下げていきましょう。

目次

モチベーションとは何か

心理学的に「モチベーション(motivation)」とは、行動を起こさせ、目標に向かって維持する心理的機能のことをいいます(※1)。日本語に訳すと「動機づけ」です(※2)。これまで心理学の世界では、人間の行動を解明する概念として、モチベーションについて多くの研究が進められてきました。

モチベーションが高いとき、脳内では何が起きている?

ビジネスシーンでは、メンバーが業績を上げるために情熱を注いでいる状態を「モチベーションが高い」と表現することがあります。モチベーションが高いとき、私たちの脳内では何が起きているのでしょうか? モチベーションに影響を与える脳内の神経伝達物質は2つあります。

モチベーションに関わる脳内物質①「ドーパミン」

1つが「ドーパミン」です(※3)。「快感物質」とも呼ばれるドーパミンは、何かに興味・関心をもつことで分泌されやすくなります。例えば、ランニングが好きな人なら、「走りたい」と思ったときにドーパミンが分泌されやすくなるでしょう。このように「〜をしたい」と思うことでドーパミンが分泌されると、脳が活性化して感情や記憶だけではなく、やる気なども高まるとされます。快感物質が分泌された結果、モチベーションの高い状態が生まれるのです。

モチベーションに関わる脳内物質②「ノルアドレナリン」

もう1つが「ノルアドレナリン」です(※4)。これは「〜しなければならない」とプレッシャーなどのストレスを感じたときに分泌されやすくなります

例えば、報告書の提出期限が迫っていると、「早く提出しなければならない」とノルアドレナリンが分泌されやすくなるのです。ノルアドレナリンが多くなると、ストレスに対応するために、脳の活動や集中力は高まります。「早くしなければ」と思いながらも急ぎの仕事をこなせるのは、このためです。

モチベーションを高めたいとき、どちらの神経伝達物質も重要な働きをします。2つのバランスが取れた状態を目指しましょう。

「モチベーション」と「やる気」の違い

「モチベーション」と聞いたとき、「やる気」そのものをイメージする人がいます。しかし、その2つは同義ではありません。それぞれの定義を改めて整理してみましょう。

  • モチベーション……行動を起こさせ、目標に向かって維持する心理的機能
  • やる気……物事をやり遂げようとする積極的な気持ちの状態(※5)

つまり、モチベーションは「行動する理由や行動に至る過程」であり、やる気は「行動を継続し続けるための力」と言い換えることができます。モチベーションがなければ、やる気は生まれません。

「モチベーション」と「やる気」は同じ意味で使われることがよくありますが、本来は意味合いが違うと知り、驚きました。

先に原因としてのモチベーションがあり、そこから生まれる結果がやる気です。だからこそ、行動力を上げたいときは、やる気を上げることよりも先に、モチベーションを見つける必要があります。そのとき、モチベーションを構成する要素がヒントになるはずです。

モチベーションを構成する要素、生理的・外発的・内発的動機づけ

モチベーションは、どのような要素によって構成されているのでしょうか?

アメリカの作家ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0論」では、モチベーションの概念が「1.0→2.0→3.0」と大きく3段階で発展してきたと述べられています(※6)。

モチベーション1.0(生理的動機づけ)とは、生存するための本能的な動機づけのことです。例えば、「空腹を満たしたい」「他人に認められたい」など、生命維持に必要な行動を取ろうとすることを指します。モチベーションのなかで最も根源的です。

モチベーション2.0(外発的動機づけ)とは、外部からの刺激で生まれる動機づけのことです。例えば、「〜すれば報奨金が出る」というアメ(報酬)や、「〜すれば上司に怒られる」というムチ(処罰)によってコントロールされることを指します。

そこから発展したモチベーション3.0(内発的動機づけ)は、自分の内側から湧き上がるような動機づけです。そのため、本能や外部からの刺激は関係ありません。例えば、「実力をつけたいから」「楽しいから」など自分の興味や関心、楽しみによって行動を起こすことです。

外発的動機づけと内発的動機づけ、2つの効果の違い

「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」によってもたらされる行動や成果にも注目してみましょう。

外発的動機づけの特徴:即効性があるが、長続きしない

まず、外発的動機づけは目標に興味がない人の行動を促しやすく、短期間で行動を変えたいときに役立ちます。「報酬を与える」「罰を与える」など実施方法がシンプルでわかりやすく、実践しやすいからです。

ただし、求める水準以上の効果は得られにくく、効果は長続きしません。また、外部からの刺激に慣れてくると、効果が薄くなります。行動を持続させるには、より強い動機づけを行う必要があるでしょう。

内発的動機づけの特徴:即効性はないが、効果が持続しやく、高まっていく。

一方、内発的動機づけは、高い集中力を発揮しやすく、困難な状況に陥っても諦めずに行動しやすくなります。達成感や喜びを感じるために目標を自分で決めて、行動すること自体が目的となるからです。また、効果が持続しやすく、その効果は徐々に高まっていきます

ただし、即効性は期待できないでしょう。目標に対する強い興味・関心が必要で、実施方法が明確ではないからです。

モチベーションの変化:外発的動機づけから、内発的動機づけへ

このような効果が期待できる2つの要素に基づき、私たちは行動しています。ときには、外発的動機づけから内発的動機づけに変化することもあるのです。

例えば、はじめは評価を得るために続けていた仕事で、自分なりの楽しみ方を見つけました。その楽しみがモチベーションとなり、仕事の専門性を高めていく人もいます。

内発的動機づけが創造性にもたらす影響

内発的動機づけは、「創造性(創造的成果につながる行動)」にも影響を与えます。

アメリカの経済学者グレッグR.オールダムは、組織のイノベーションや有効性、長期的な存続のためには、創造性が不可欠だと指摘しました(※7)。つまり、組織の成長に創造性は欠かせません。

ハーバード大学のテレサ M. アマビル教授は、内発的動機づけが創造性を高めることを発見しました(※8)。内発的動機づけがあれば、目的を達成するために、いろいろな方法を試して可能性を探ろうとするからだそうです。

多くの時間がかかっても、あらゆる可能性を忍耐強く探求することで、創造性は高まります。そして、試行錯誤して見つけたアイデアに対して、信念やこだわりを持つはずです。信念やこだわりもまた、創造性を高めるためには必要とされます。

モチベーション3.0論を展開したダニエル・ピンクも、内発的動機づけの効果について、「創造的を必要とする仕事に就く人のやる気の源になる」と主張しています(※9)。

一方、アマビル教授の研究では、外発的動機づけによって創造性が制限されることが示されました(※7)。

報酬などを早く得ようとして行動する人には、創造性が期待できないであろうことがわかったのです。

好きなことをしていると、時間を忘れて夢中になれる。それはモチベーションが自分の外側から与えられているのではなく、内側から沸き上がっているからなんですね。

はい。そのことを理解すれば、モチベーションの維持を難しく考える必要はなくなると思います。ここからは、モチベーションを維持するための効果的な方法をご紹介しますね。

モチベーションをどう維持する?アンダーマイニング効果とエンハンシング効果

モチベーションの概要:外発的動機づけと、内発的動機づけ、アンダーマイニング効果とエンハンシング効果

内発的動機づけができるかどうか。

モチベーション維持という観点では、それが大事なポイントの一つとなります。

しかし、外発的動機づけによって、内発的動機づけが低下することがあります。その心理現象は「アンダーマイニング効果」と呼ばれ、心理学者エドワード・L・デシらの実験によって判明しました(※10)。

モチベーションを高めるはずが、むしろ阻害してしまう「アンダーマイニング効果」

例えば、写真撮影が趣味だという人がいました。「撮影することが純粋に楽しかった(内発的動機づけ)」ので続けていたのです。

しかし、撮影した写真が売れたことにより、今度は撮影の目的が「報酬をもらうこと(外発的動機づけ)」にすり代わります。すると、本来あった内発的動機づけが失われ、「売れないと撮影しても楽しくない」「撮影を強制されているように感じる」といった気分になります。そうなれば、続けることが難しくなるでしょう。このような心の変化がアンダーマイニング効果です。

アンダーマイニング効果が起こる理由

なぜ、アンダーマイニング効果が起きるのでしょうか?

そこには「自己決定感」や「有能感」が大きく関係しています。

私たちには「自己決定感(自分のことは自分で決めているという気持ち)」や、「有能感(自分なら頑張ればできるという気持ち)」をもちたいという欲求があります。内発的動機が目的の場合、それらが満たされて、やりがいや楽しさを感じるのです。

しかし、行為の目的が外発的動機づけにすり代わると、他者から自分の行為を強いられているように感じます。その結果、自己決定感や有能感が低下して次第にやる気を失い、かつてのようにやりがいや楽しさを感じなくなるのです。

外発的動機づけから内発的動機づけへ切り替える「エンハンシング効果」

モチベーション維持に「エンハンシング効果」を活用するのも手です。エンハンシング効果とは、信頼している人からの期待や褒め言葉などの外発的動機づけによって、内発的動機づけが高まることを指します(※11)。

例えば、昇進のために(外発的動機づけ)、仕事に邁進している人がいました。しかし、仲間と働くことにやりがいを感じるようになり(内発的動機づけ)、それを目的として夢中で働くようになります。仲間と働く楽しさに気づいたことで、内発的動機が高まったのです。

エンハンシング効果は、アメリカの発達心理学者エリザベス・ハーロック博士の実験によって証明されています。算数のテストを5日間受ける実験で、先生から褒められ続けた生徒のほうが、叱られ続けた生徒よりもやる気が向上し、成績が上がりました。

エンハンシング効果は、アンダーマイニング効果と逆の心理現象だといえます。アンダーマイニング効果に陥らず、エンハンシング効果につなげるには、どのような外発的動機づけを行うかが重要です。

心理学者の溝上慎一教授によれば、内発的動機づけはお金や昇給など「目に見える報酬」によって低下しやすく、褒めるなどの「言語的な報酬」によって高まりやすいそうです(※12)。

内発的動機づけに比べて、外発的動機づけは周囲からの直接的な働きかけが可能なものです。また、自主的に設定することも可能なので、工夫することでモチベーション維持にうまくつなげられるのではないでしょうか。

セルフモチベーションの実践、モチベーションアップの3つの方法

モチベーションを構成する要素や関連する心理現象は、モチベーションを高めるヒントになります。まずは、自分自身でモチベーションをコントロールする「セルフモチベーション」の方法です。

(1)明確な目標と達成後のイメージを持つ「SMARTの法則」

セルフモチベーションを効果的に行えるように、まずは目標を具体的な数値や行動まで落とし込み、明確にしておきましょう。「上司から評価される」などのあいまいな目標のままだと、ゴールをイメージしにくく、モチベーションが高まりづらいからです。

目標設定では「SMARTの法則」が使えます。これはコンサルタントのジョージ・T・ドラン氏によって、目標達成の可能性を高める効果的な目標設定の方法として提唱されました(※13)。目標設定に、次の5つの要素を取り入れる方法です。

<SMARTの法則>

  • Specific(具体的)
  • Measurable(計測可能)
  • Achievable(達成可能な)
  • Relevant(関連性)
  • Time-bound(期限が明確)

その上で、目標達成後の自分をイメージします。このとき、目標達成によってもたらされる効果をイメージすることが重要です。例えば、「この企画が通れば、自分のやりたい仕事が回ってくる可能性がある」と想像してみます。そうすれば、内発的動機づけが高まり、自発的な行動につながるはずです。

(2)小さな成功体験を積み重ねる「スモール・ステップ」

内発的動機づけの要素となる「自己効力感」を高めることで、報酬などがなくても自発的なやる気を促すことができます。

自己効力感とは、「自分ならできそうだ、できるかもしれない」と思える気持ちのことです。この気持ちが低いと、「私にはできないかもしれない」と尻込みして、行動を起こしにくくなります。自己効力感を高めたいとき、アメリカの心理学者バラス・スキナー氏が提唱した「スモール・ステップ」が効果的です(※14)。

スモールステップとは、目標を段階ごとに細分化して、簡単な内容から少しずつ達成していき、最終目標に近づいていく手法のことです。難しい目標を達成したいときや、目標が難しく達成するまで時間がかかるときに効果的だとされています。

例えば、毎日10キロ走ることを目標にしている人は、「3日に1回、5キロ走ろう」と目標を小さくしてから取り組みましょう。大きな目標を立てて達成できないと、「やっぱりできない」と自己効力感が低くなるからです。一方、確実にできる小さな目標を少しずつ達成していけば、自己効力感が徐々に高まっていきます。

(3)好奇心の刺激や自己成長に注目する

やりがいを感じていた仕事で、昇進を強く意識した結果、仕事そのものを楽しめなくなってしまった……。このようにアンダーマイニング効果の状態にあるとき、内発的動機づけを意識してみてください。

例えば、本や雑誌などから仕事の関連情報を収集して、好奇心を刺激します。報酬や昇進ではなく、「自分の仕事力がどれくらい上がったのか?」など自己成長に目を向けるのも手です(※15)。こうして内発的動機づけを意識することで、かつてのように楽しめるようになっていき、モチベーションを維持しやすくなるでしょう。

部下のモチベーションを高める3つのコツ

リーダーや上司には、部下のやる気を引き出す役割があります。部下のモチベーションを高める方法は次のとおりです。

(1)過度な競争環境や監視状態をつくらず、マイクロマネジメントを避ける

アンダーマイニング効果は報酬以外にも、懲罰への脅威や締め切りの設定、監視、競争、評価などのネガティブな外発的動機づけによって起こりやすくなります。そのため、部下に対して「過度な競争環境」や「監視状態」をつくらないように心がけることです。

例えば、「周囲と営業成績を競わせることで、部下のライバル意識を高めて、業績を上げよう」と考える上司がいたとします。しかし、やり過ぎてしまうと、部下は「負けられない」と必要以上にプレッシャーを感じ、仕事を楽しめなくなる可能性があるのです。

また、仕事の進捗を確認するために、部下の勤務状況を過度に監視する上司もいます。しかし、監視されている部下は失敗を恐れて、自発的な行動を起こしづらくなる場合があるのです。

ビジネスの世界では、過度に細かい管理をすることを「マイクロマネジメント」と言いますが、「マイクロマネジメント」は、アンダーマイニング効果を起こし、内発的動機づけを阻害する可能性があることがわかるかと思います。

このようなアンダーマイニング効果が起こらないよう、過度に周りと競わせたり監視しすぎたりせず、部下を見守るようにしましょう。

(2)「目に見える報酬」だけでなく、「言語的な報酬」を意識する

部下には「目に見える報酬」だけでなく、「言語的な報酬」も意識するようにしましょう。そうすれば、内発的動機づけが高まるエンハンシング効果を期待できるからです。

例えば、部下が成果を出したら、報奨金を与えるだけではなく、期待や賞賛の言葉をかけるなどの言語的な報酬を与えるようにします。部下の努力をよく観察して、成果を出すまでの過程を評価する言葉をかけることです。そうすることで、やる気のある部下の自己決定感や有能感を上げることにつながりますし、部下は、より自発的に行動したくなるはずです。

(3)結果よりも「過程」「努力」などプロセスに注目した褒め方で、エンハンシング効果を

エンハンシング効果を期待して褒めるときは、褒め方に注意することです。

褒めるときは「能力」や「結果」だけを褒めないようにします。部下は「能力があるから頑張らなくてもできる」と努力しなくなったり、「失敗すれば叱られるだろう」と失敗を恐れるようになったりするからです。

そうではなく、結果に至るまでの「過程」や「努力」などのプロセスを褒めるようにしましょう。部下は「認められた」と承認欲求が満たされ、目標達成のために自発的な力を出せるようになるからです。例えば、次のような褒め方ができます。

<エンハンシング効果につながる褒め方>

NG:「おめでとう。もともと君には高い能力があるから、あの案件を勝ち取れたんだね」

OK:「おめでとう。毎日、下調べを丁寧に行って、お客様と関係性を作りながら準備していたよね。これまで地道に頑張ってきたからこそ、成果につながったんだね」

自分と他人のモチベーションアップのコツ

モチベーションのコントロールには、外発的動機づけと内発的動機づけが深く関係していることがよくわかりました。知り合いの社長が、「給料を上げたのに社員がやめてしまう」と言っていましたが、こうした背景が関わっているのかもしれませんね。

モチベーションを構成する2つの要素は、それぞれに独立しているわけではありません。相関関係にあり、ときには他方を変化させることもあるんです。どちらの動機づけをすれば、モチベーションを高めることができるのか? 今回の内容を参考に考えてみてくださいね。

監修:藤本 志乃(ふじもと しの)
臨床心理士・公認心理師・マインドフルネス瞑想講師

教育相談、医療機関での活動を経て、2020年にウェルビーイングのためのカウンセリングルームLe:self(リセルフ)オープン。気軽な心ケアとより良い生き方をコンセプトに、マインドフルネス、ACTのワークショップ・イベントを一般・企業向けに開催している。
H P https://leself.jp

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