生理前に気分が落ち込んだり、イライラしてしまうのはなぜ?

生理が始まる前に、気分が落ち込んだりイライラしてしまうことはありませんか?
自分ではコントロールできない気分の波に戸惑ったり、自己嫌悪を感じてしまうこともあるかもしれません。

このような、生理の3〜10日程前から起こる、心の症状や体の違和感といった不快な症状は「PMS:Premenstrual Syndrome(月経前症候群)と呼ばれています。
日本では月経のある女性の7~8割が、生理前に何かしらの症状を感じていると言われています。(※1)

ではなぜ、生理前に気分が落ち込んだり、イライラするといった心の不調が起きてしまうのでしょうか?
明確な理由は分かっていませんが、生理周期のホルモン変動に関連している可能性が指摘されています。(詳細については、記事後半の「生理周期とホルモン変動」をご覧ください。)

日常で出来る工夫5選

気分の波でやりたいことに集中しづらくなったり、他人の言葉にいつも以上に敏感に反応してしまったり…感じ方は人によって様々ですが、いつもの自分と違う感覚に戸惑い、つらさを感じることもあるかと思います。

そんな生理前の、気分の症状を和らげる工夫はあるのでしょうか。現在考えられている方法について、以下でご紹介していきます。

1.食事の工夫

食事の工夫

 

■カルシウムを積極的に摂取する

500mgのカルシウムを1日2回摂取した人はそうでない人に比べ、生理前の倦怠感・抑うつ状態が改善されました。(※2)

PMS症状は、カルシウム不足によって引き起こされている訳ではないと考えられていますが(※3)、カルシウム摂取によって症状の改善が確認されています。これは、カルシウムが中枢神経系にプラスの作用を及ぼしているためと想定されています。

成人ひとりあたりの1日のカルシウム接種目標量は600~800mgなので、この数字と合わせて生理前の期間は特に意識的に食品やサプリメントを摂取できると良さそうです。(※4)

<カルシウムが豊富な食品の例>

  • 牛乳コップ 1杯(200g)   :220mg
  • ヨーグルト 1パック(100g)   :120mg
  • 小松菜1/4束(70g)     :119mg
  • ひじき煮物1食分(10g)   :140mg
  • 木綿豆腐1/2丁(150g)   :180mg

 

■高GIのお菓子や食事を控える

生理前に分泌量が増える「黄体ホルモン(プロゲステロン)」は、「インスリン」の働きを抑制すると考えられています。(※5)

インスリンは血糖値を調整するホルモンで、上手く働かないことで、食後に高血糖状態になりやすくなります。すると通常以上の血糖値を下げようと、遅れてインスリンが過剰に分泌されるため、時間を空けて血糖値が急降下します。

この血糖値の急降下に対して脳が反応し、血糖値を上げようとアドレナリン、ノルアドレナリンなどの興奮系ホルモンを大量放出します。この興奮系のホルモンは、精神面で不安やイライラを感じさせやすくしてしまいます。

こういった生理前の、「血糖値が急降下しやすく、結果的に興奮系ホルモンが大量放出されて精神面が不安定になりやすい」という状態に輪を書けてしまうのが「高GIのお菓子」や「炭水化物のみの食事」であるため、注意が必要です。

「GI値」は、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示していて、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったものです。一般的にグルコースを基準(100)として、GIが70以上の食品が高GI食品、56~69の食品が中GI食品、55以下の食品が低GI食品と定義されています。(※6)

高GIのお菓子は、血糖値を急激に上昇させやすく、その後の血糖値の急降下と興奮系ホルモンの大量分泌を起こしやすくしてしまいます。

高GIのお菓子の代表例としては飴や菓子パンといった、「食物繊維が少ない炭水化物食品」で、注意が必要です。(※7)食物繊維が少ないと消化吸収に時間がかからず、すぐに糖質が吸収されるため血糖値が急激に上がりやすくなります。「菓子パンがお昼ご飯代わり」といった食事の取り方も見直してみた方がベターです。

反対に低GIの食品であれば血糖値はゆるやかに上がっていくので、お菓子を食べたい時には低GIのものを意識的に選ぶようにしましょう。食物繊維、タンパク質、脂質の割合が高いと、「糖質が高割合の食品」よりも低GIとなります。

<低GIおやつの例>※8

  • 果物:リンゴ、イチゴ、キウイ
  • 乳製品:ミルク、チーズ、ヨーグルト
  • ナッツ類:アーモンド、カシューナッツ、クルミ

 

■アルコールを控える

アルコールは、肝臓の糖産生を抑制してしまうため、低血糖状態を引き起こしやすくしてしまいます。(※9)

すると前述のように、「血糖値を上げようとアドレナリン、ノルアドレナリンなどの興奮系のホルモンが分泌され、精神面が不安定になりやすい」状態となってしまいます。

そのため生理前は、アルコールの摂取は避けられると望ましいでしょう。

また、特に食事をしていない状態でアルコール摂取をしてしまうとその後の血糖値上昇が難しくなってしまいます。アルコールを取る場合は、事前に食事を済ませておくようにしましょう。前述の低GI食品だとゆるやかに血糖値が上昇するため、なお良いと言えます。

 

■食事を1日の中で複数回に分けて食べる

血糖値の急上昇・急降下が興奮系ホルモンの分泌を促し、不安やイライラを感じやすくしてしまいます。一方で、血糖値を一定の範囲に保つことで、急上昇・急降下を避けることが可能です。

そのため生理前は、食事を1日の中で複数回に分け、こまめに食べることもおすすめです。食品摂取の間隔が狭まることで、血糖値を一定の範囲に保つことができます。朝ごはんを抜くのではなく、チーズひとかけらやヨーグルトだけでもよいので低GIのものを口にして、3食の間に「ミニご飯」を食べるつもりでナッツバーやプロテインバーをとると、血糖値が安定しやすくなります。

2.運動をする

運動をする

適度な運動も、つらい気分の解消に効果的と考えられています。
生理前には、幸福感に関連する「β-エンドルフィン」というホルモンが減少してしまうと考えられています。β-エンドルフィンは苦痛を取り除く際に最も多く分泌されることが知られており、運動を行うことでも分泌されることが知られています。(※10)

運動という軽度な負荷を体に与えることで、βエンドルフィンが分泌され、つらい気分が解消されるというわけです。

β-エンドルフィンが放出されやすい運動条件は以下です。(※11)

  • β-エンドルフィンは運動開始から30分後に放出される
  • 中強度(3.0~3.5METs)の運動が適している
    • METs(メッツ)は運動強度の単位で、安静時を1として、何倍のエネルギーを消費するかを表す値。(※12)
    • 中強度の運動例としては、ウォーキング、軽い筋トレ、掃除機かけ、風呂掃除など
  • 一人よりも複数名で行うほうがβエンドルフィンのブーストを得やすい

総合すると、友人や家族と会話しながら、30分以上のウォーキングなどを行えると気分解消に効果的と言えるでしょう。

体や心に無理のない範囲で、楽しみながら体を動かせると良さそうです。

3.入浴

入浴

入浴も、自律神経を整え気分の揺らぎを少なくするのに効果的です。

生理前は、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の急激な分泌低下で自律神経が乱れると考えられています。

また、生理前は低血糖になりやすく興奮系ホルモンが分泌されていて、交感神経が優位になってしまいがちです。

夜は積極的にリラックスし、副交感神経優位な状態をつくっていくことでリズムをつくり、自律神経のバランスを整えて行きましょう。

入浴はリラックス効果があり、副交感神経を高めることができます。

<効果的な入浴法のポイント>※13

  • 42度ほどの熱いお湯だと、交感神経が優位になってしまいます。(朝目覚めさせるならこの温度)
  • 37~39度程度の少しぬるいお湯に入ることで、リラックス効果が見込めます。
  • 入眠の1~2時間前に入浴を済ませると、体内深部の体温が一時的に上がり、その後下がることで眠気が誘発され、良い入眠にも繋がります。

4.ヨガ

ヨガ

ヨガも、自律神経を整えるエクササイズとして効果的です。

普段私達が意識せず呼吸する際には、「胸式呼吸」を行っています。これは交感神経を高める呼吸法です。

一方でヨガでは、腹式呼吸を意識的に行います。腹式呼吸は副交感神経を刺激するため、自律神経に調整を働きかけることに繋がります。(※14)

また、生理前はプロゲステロンの影響で水分が貯まってむくみやすく、血行不良も起こしやすい状態です。(※15)ヨガではさまざまなストレッチポーズがあるため、これが体の血行改善にも役立ちます。

5.マインドフルネス

マインドフルネス

特別な準備をせずとも心を落ち着かせる方法として、マインドフルネスがあります。

脳の扁桃体(へんとうたい)は、不安と深く関連する部位であると言われていますが、マインドフルネスは、この扁桃体の過剰な活動を収めることが知られています。(※16,17)

マインドフルネスと聞くとじっと目を閉じて呼吸に意識を置き続ける「呼吸瞑想」を思い浮かべる方も多いかもしれません。

もちろんそのような呼吸瞑想もひとつのマインドフルネスですが、例えば歩いているときに歩く感覚に意識を置き続けたり、食べる時や歯磨きするとき等に、ひとつの感覚に意識を置く事はすべてマインドフルネスであると言えます。

マインドフルネスでは、ひとつの感覚に意識を置きながら、浮かんできた思考や感情は客観的に受けとめ流して行きます。

ひとつの感覚に集中することは、心を落ち着かせることに役立ちます。また、「浮かぶ思考や感情を客観的に受けとめ流す」作業は、気分の波に飲まれないように意識するトレーニングに繋がります。

浮かぶ思考や感情は否定せず、遠目から見る感覚で「超冷静になって」観察してみましょう。観察し気づいていくことで、自分が今どんな状態かを理解することにも繋がっていきます。

*「マインドフルネスのやり方 入門編」の記事もぜひ参考にしてみてくださいね

つらい時には受診も考えてみて

多くの女性が生理前に気分的なつらさを感じていますが、その程度や感じ方はひとりひとり異なるものかと思います。身体的な症状も含め、日常生活に困難を感じている場合は、ぜひ近くの産婦人科等で相談してみてくださいね。

本来の自分のペースで生き生きとした日々を送れるよう、自分の心と身体のケアを行っていきましょう。

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監修:山本 隆一郎(やまもと りゅういちろう)
江戸川大学 社会学部人間心理学科 准教授・江戸川大学睡眠研究所 研究員

博士(人間科学)、公認心理師、臨床心理士、専門健康心理士。早稲田大学人間科学部に入学後、同大学大学院の修士課程・博士後期課程に進学。日本大学医学部公衆衛生学分野専修研究員、上越教育大学大学院学校教育研究科臨床・健康教育学系において助教、講師、准教授として勤務し、2016年4月に江戸川大学に着任。研究のかたわら、臨床心理士として心療内科を中心に心理臨床活動を行う。現在は、江戸川大学睡眠研究所の研究員、心理相談センターでの相談員としても活動。

(参考)生理周期とホルモン変動

生理周期は卵胞期、排卵、黄体期、月経期から構成されます。

  1. 卵胞期
    生理が終わると「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の分泌量が増加し、妊娠に備えて子宮内膜が厚くなっていきます。
  2. 排卵
    卵胞内で卵子が十分に育つと排卵が起こります。
  3. 黄体期
    卵子を包んでいた卵胞は黄体へと変化し、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を分泌し始めます。放出された卵子は子宮へと移動し、プロゲステロンによって子宮内膜は受精卵を着床しやすい状態に変化していきます。
  4. 月経期(卵胞期の始まり)
    妊娠しなかった場合、エストロゲン、プロゲステロン双方のホルモンは急激に分泌低下します。子宮内膜ははがれ落ち、生理が始まります。

生理周期とともに、エストロゲン・プロゲステロンのホルモンバランスは変動していき、主に黄体期に、PMS症状が出ることが知られています。
黄体期にPMS症状が出て、気分が落ち込んだりイライラしやすい理由としては、以下等の仮説が考えられています。

  • 「β-エンドルフィン」や「セロトニン」といった精神を安定させる役割を持つ脳内ホルモンの分泌量は、エストロゲンの増減と連動している。そのため、黄体期終了時(生理前)にエストロゲンの分泌が低下すると、合わせてこれらの精神安定ホルモンも低下してしまい、気分が揺れやすくなる。(※18)
  • 黄体期終了時(生理前)には、ホルモンの急激な分泌低下が起こる。これに脳の視床下部が影響を受ける。視床下部は自律神経調節も行っているため、自律神経が乱され、精神面で落ち込みやイライラを感じやすくなる。(※19)

参考文献

※1 公益社団法人 日本産科婦人科学会 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
※2  Zinat Ghanbarid, Fedieh Haghollahid, Mamak Shariata, Abbas Rahimi Foroshanib, Maryam Ashrafic(2009), Effects of Calcium Supplement Therapy in Women with Premenstrual Syndrome
※3 福岡秀興(2006), 月経前緊張症に対する乳製品治療効果の検討
※4 農林水産省 大切な栄養素カルシウム
※5 糖尿病と女性のライフサポートネットワーク 月経と血糖のふか〜い関係って?
※6 大塚製薬 GIについて学ぼう
※7 オムロン 血糖値が上がりやすい食べ物と上がりにくい食べ物を教えてください。また、最近よく聞く「低GI食品」について教えてください。
※8 healthline  A Beginner’s Guide to the Low Glycemic Diet 
※9 厚生労働省 e-ヘルスネット アルコールと糖尿病
※10 厚生労働省 e-ヘルスネット β-エンドルフィン
※11 healthline  13 Ways to Increase Endorphins
※12 厚生労働省 e-ヘルスネット メッツ / METs
※13 大正製薬 自律神経を整える入浴法
※14 ルネサンス ヨガ、ストレッチ、アロマ…日常生活にプラスして自律神経の不調を改善しよう
※15 CLINIC FOR 顔や体がむくむ… 生理前の不快な1週間の乗り切り方について、医師が解説します。
※16 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 感情の中枢である扁桃体におけるドーパミンの役割を解明
※17 NHK 不安をやわらげる効果に期待!マインドフルネスとは
※18 healthline How to Deal with Premenstrual Mood Swings
※19 小林製薬 命の母ホワイト 生理痛・生理不順の原因