最近、ストレスにうまく対処できていない気がします。ストレス解消法が合っていないのでしょうか?
それでは、コーピングリストを使ってみるのはどうですか?
コーピングリスト?初めて聞きました。興味あります。
それでは、今回はコーピングリストの作り方と実践方法を学んでいきましょう。
就職、異動や転勤、あるいは転職、独立などで4月から環境が変わったという方もいるのではないでしょうか。あるいは、仕事で役職がついた、担当する業務が変わったという方もいるかもしれません。自分にとってはポジティブな出来事であっても、環境の変化や立場の変化がストレスの原因となることがあります。
目次
ストレスとは
まず、ストレスが生じるメカニズムを知っておきましょう。「ストレス(stress)」とは、外部からの刺激などによって身体の内部に生じる反応のこと(※1)。
心理学ではストレスを「ストレッサー」と「ストレス反応」の二つに分けて考えます。
「ストレッサー」とは、ストレスの原因となる外的刺激のこと。具体的には、暑さや寒さ、有害物質などの物理的・化学的なもの、病気や睡眠不足などの生理的なもの、人間関係や家庭の問題、仕事上の問題などを起因とする心理的・社会的なものなどがあります。
続いて「ストレス反応」とは、ストレッサーに対する心と体の反応です。「イライラする」「不安になる」「気分が落ち込む」などの心の反応や、「胃が痛くなる」「息苦しくなる」「動機がする」などの体の反応が該当します。

ストレッサーに対する反応は人それぞれ。同じような状況下であっても、ストレスが生じる人もいれば、ストレスが生じない人もいます。ストレスが生じる場面があっても、そこから受けるストレスの程度には個人差があるのです。
ストレスコーピングによるセルフケア
ストレッサーによって慢性的にストレスがかかると、心身に様々な悪影響が生じます。健康を維持するためにも、ストレスのセルフケアを行うことが必要です(※2)。
(1)ストレスコーピングとは
心理学では、ストレスの原因であるストレッサーにうまく対処しようとすることを「ストレスコーピング(stress coping)」と呼びます。ストレスコーピングはストレスのセルフケアの方法の一つで、ストレスの原因を除去したり、ストレスに対する自分の考え方を変えたりと、さまざまな角度からアプローチしながらストレス対処を行う方法です。
ストレスコーピングには、「情動焦点型コーピング」と「問題焦点型コーピング」の2種類があります。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
ストレスコーピングの記事(https://neuromind.jp/stress_coping/)
(2)情動焦点型コーピング
「情動焦点型コーピング」は、ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方に焦点を当て、対処することでストレスに対応する方法です。ストレスを感じた時の悲しみ、苦しみ、怒り、不満などのストレス感情にアプローチすることで、つらいと感じる気持ちを変化させて、ストレスをコントロールします。
特に、ストレッサーが仕事関係などの外的環境によるものの場合、自分の力では根本的な解決が難しいケースも多くなります。そのような場合に用いられるのが「情動焦点型コーピング」です。ストレス解消の気晴らしや感情を発散させることも「情動焦点型コーピング」の一つです。
(3)問題焦点型コーピング
「問題焦点型コーピング」は、直面している問題・課題(=ストレッサー)そのものに働きかけて、それ自体を変化させて解決を図ろうとする方法です。自分の力で解決するだけでなく、人に相談したり、場合によっては、解決を諦めて逃げたりすることも「問題焦点型コーピング」の一つです。
一見、ストレッサーそのものに働きかけて解決しようとする「問題焦点型コーピング」のほうが有効に見えるかもしれませんが、問題化させて直視することで新たなストレスを生んだり、周囲の人を巻き込むことで人間関係を悪化させてしまうなど、ストレスの悪循環に陥る可能性もあります。だからと言って、「情動焦点型コーピング」ばかりでも環境の改善は望めません。
二つのコーピングをバランスよく取り入れ、状況に応じて適した方法を使用する、失敗したら別の方法に変更してみるという柔軟性が重要です。
コーピングリストとは
ストレスの原因も、ストレス反応も人それぞれ。自分だけのストレスコーピングを見つけましょう。これまでの研究では、自分なりのコーピング方法を多く持っていたり、様々なコーピング方法をより柔軟に選べる人ほど、感じるストレスが低減しやすいという結果が出ています(※3)。自分自身のストレッサーとストレス反応に気付き、しっかりと認識することで適切なコーピングを選び、対処することができるのです。

(1)コーピングリストの作り方
ストレスに対して、どんな気晴らし方法や対処を行えば効果的か、具体的な方法や行動をリストアップしたものがコーピングリストです。
コーピングリストを作成することによって自分自身のストレス対処法が明確になり、ストレスの種類や状況に応じてスムーズに行動できるようになります。
日々のストレスとうまくつき合うためには、コーピングをたくさん用意しておくことが重要です。作成のコツはとにかく細分化すること。以下を参考にしながら、100個を目標に自分だけのコーピングリストを作ってみましょう(※4)。
【コーピングリストを作る際のポイント】
- ストレスを感じていない時、元気な時に書き出す。
- いい/悪い、できる/できないを考えず、まずはとにかく挙げてみる。
- 増やす時は、1つのコーピングを真似していくとやり易い。ex.旅行に行く→温泉に行く→銭湯に行く
- 具体的な行動に移せるものをピックアップする。
- 趣味や特技を生かしたことを積極的に書き出す。
- なるべく時間とお金をかけないものにする。
- できるだけ、人名・品名・ブランド名など具体的な名称を入れこめるとよい。
- 1度試して効果がなくても、削除しないで残す。
- 項目はどんどん増やしていく。更新ではなく、追加してアップデートする。
- したいこと、自分への言葉がけも積極的に入れていく。
(2)コーピングリストの使い方
ストレスコーピングでは、個々のストレス反応やストレッサーに合わせてコーピングを選んで使ってみて、効果を検証することが重要です(※5)。このサイクルを意識的に繰り返し、コーピングのスキルを少しずつ向上させることをイメージしながら取り組みましょう。
コーピングを実施しても効果がない時もあるので、その時は「今回は、このコーピングは合わない」と気づくことも大切です。
作成したコーピングリストは、ストレスを感じた時にすぐに見ることができるよう、いつでも見ることができる場所に置いたり、携帯するようにしましょう。いつも持ち歩く手帳に書き出したり、スマホのメモ機能を活用したりするのも良いですね。このあと紹介するこころのセルフケア・アプリには、コーピングリストを登録し簡単に確認できる機能が搭載されていますので、チェックしてみてください。
コーピングリストの事例 200選

コーピングリストを作成いただくための補助として、アプリAwarefyの「みんなのコーピングリスト」に登録されているコーピングを200個、参考としてご紹介します。
※コーピングリストの例(Awarefy「みんなのコーピングリスト」より)
<ちょっと一休み編>
- あったかいお茶を飲む
- コーヒーを飲む
- スイーツを食べる
- 温かい飲み物を入れる
- チョコを一粒食べる
- 深呼吸する
- 部屋の空気を入れ替える
- 外の空気を吸う
- 部屋の中を歩く
- 歌を歌う
- 窓から外をぼんやり眺める
- 自然の音を聴く
- 日光を浴びる
- 雲の流れを眺める
- BGMをかける
- 目薬をさす
- 歯磨きをする
- 笑う
- 休憩をする
<お出かけ編>
- 自転車に乗って近所を散策する
- スーパーやコンビニに買い物に行く
- 買い物に出かける
- 映画館に映画をみにいく
- ウィンドーショッピングをする
- カフェに行ってお茶する
- ドライブをする
- スポーツ観戦する
- ピクニックする
- 公園に行く
- 釣りにいく
- サイクリングする
- 外食をする
- コンビニで気の向くままに買い物する
- 近所を散歩する
- 日帰り旅行にいく
- 温泉に行く
- 海を見に行く
- 飛行機を見に行く
- 森へ行く
- キャンプをする
- 登山へ行く
- お寺めぐりをする
- 神社めぐりをする
- お墓参りをする
- 電車で少し遠出する
<たっぷりまったり編>
- 丁寧にコーヒーを淹れる
- 料理をする
- 好きなお酒を楽しむ
- 好きなものを食べる
- お気に入りの音楽を聴く
- 音楽を聴く
- お気に入りの画像を眺める
- お気に入りの動画を見る
- スマホゲームをする
- 楽器を弾く
- 最近楽しかったことを思い出す
- スマートフォンにある写真を見返す
- 子供の頃の写真を見返す
- 丁寧に文字を書いてみる
- 漫画を読む
- 本を読む
- テレビをみる
- ゲームをする
- 自宅で映画を見る
- ドラマをみる
- 旅行雑誌を読む
- 絵を描く
- 録画したテレビ番組をみる
- ネットショッピングをする
- 旅行したい場所について調べてみる
- ネットサーフィンをする
- 漫才やコントを観る
- お笑い番組を見る
- 勉強する
- 本を声に出して読む
- 文章を書く
- 昔もらった手紙や寄せ書きを読み返す
- 小さかった頃の楽しい思い出を思い出す
<リラクゼーション編>
- マッサージに行く
- 銭湯に行く
- 露天風呂に入る
- 整体に行く
- ヘッドスパへ行く
- ストレッチを行う
- いい香りを嗅ぐ
- 楽な服に着替える
- 頭皮マッサージをする
- 疲れている部分にホットタオルをあてる
- 横になる
- ゴロゴロする
- 肩や首を温める
- マッサージをする
- お風呂に入る
- 半身浴をする
- 足湯をする
- 入浴剤を入れたお風呂に浸かる
- 長風呂する
- 毛布にくるまって休む
- 部屋を加湿する
<整理整頓編>
- 革製品のお手入れをする
- 財布やカバンの中身を整理する
- パソコンのデスクトップを綺麗にする
- 部屋の掃除をする
- 部屋の片付けをする
- いらないものをフリマアプリに出品する
- 部屋の模様替えをする
- 断捨離をする
- 家のシンクを磨く
- 本棚を整理する
- 洋服ダンスを整理する
- 食器棚を整理する
- 冷蔵庫を整理する
- 洗濯をする
- 断捨離をする
<おしゃべり・ふれあい編>
- 飲み会を開催する
- 気のおける人と話す
- ボランティア活動をする
- 家族と会話する
- 友人と対面で話をする
- 家族に電話をする
- 友達に電話をする
- ペットと触れ合う
- 犬と戯れる
- 猫と戯れる
- ペットに餌をあげる
<日常に+α編>
- いつもと違うルートで家に帰る
- 一人カラオケをする
- 焚き火をする
- 毎日使うものを買い換える
- お菓子作りをする
- 好きな食べ物をテイクアウトする
- いつもよりちょっと高いお菓子・スイーツを買う
- いつもよりちょっと高いお惣菜を買う
- お気に入りのマグカップで飲み物を飲む
- お気に入りの器で料理を食べる
- 植物を育てる
- 何か初めてのことに挑戦してみる
- 花を買って飾る
- 旅行の計画を立てる
- 勉強したかったことを勉強してみる
- 裁縫をする
- 感動する映画を観る
- スポーツのスーパープレイ集を観る
- 暗闇に浸る
- 部屋の模様がえをする
- お風呂で漫画を読む
- 歴史小説を読む
- 日曜大工をする
- お香をたく
- 詩を書く
- 短歌・俳句をよむ
- 花を育てる
- 野菜を育てる
- ぬいぐるみを愛でる
- 手紙を書く
- 寝具を外に干してふかふかにする
<エクササイズ編>
- 泳ぎに行く
- エクササイズをする
- 筋トレをする
- ランニングをする
- ヨガをする
- ジムへ行く
<セルフケア編>
- マインドフルネス瞑想を行う
- 新しい髪型にする
- 美容院にいく
- ネイルサロンに行く
- ヨガのレッスンを受ける
- カウンセリングを受ける
- 早めに寝る
- スキンケアをする
- お気に入りの洋服を着る
- 自分を褒める
- 鏡を見て自分にポジティブな言葉をかける
- 一度どうでもいいか!と考える
- 自分にとって明るい未来を妄想する
- 将来の夢が叶った瞬間を妄想する
- 好きな物語に自分が入り込んだストーリーを妄想する
- 美味しい食べ物を食べている自分を妄想する
- 行きたい場所に行っている自分を妄想する
- 世界一周の旅をしている自分を妄想する
- 鏡を見て自分にポジティブな言葉をかける
<ジャーナリング編>
- 紙に今考えていることや思っていることを書き出す
- 行きたい場所リストを作成する
- 次の週末にやりたいことをリストアップする
- 夢を書き出す
- 次の週末にやりたいことをリストアップする
- 夢を書き出す
- 気になっていることを書き出す
- やりたいことリストを作る
- やるべきことを紙に書き出す
- やるべきことを紙に書き出す
- 嬉しかったことの記録を読み返す
- 自分は今XXな感情なんだなと言葉に出してみる
いかがだったでしょうか?お気に入りのコーピングは見つかりましたか?
コーピングは、忘れないように書き出しておくのがおすすめです。最後に、アプリでコーピングリストを活用する方法をご紹介します。
アプリで取り組むストレスコーピング
弊社が運営するアプリAwarefyでは、ストレスコーピングをアプリで行える機能が搭載されています。セルフケアメモを使ったストレスコーピングの具体的方法について説明します(※6)。
(1)「レパートリー」をコーピングリストとして使う
Awarefyには、自分だけのストレス対処方法(コーピング)やセルフケア方法を書き溜めておける「レパートリー」という機能が搭載されています。「近所を散歩する」「好きなお笑い番組を観る」「お酒を楽しむ」「友達と電話をする」など、自分にとって心地よいコーピングのレパートリーを書き溜めておき、疲れた時やストレスを感じた時は、「レパートリー」を見返して、リフレッシュするために行動してみてはいかがでしょうか。

(2)「セルフケアメモ」を活用する
「セルフケアメモ」は、自分で実施したセルフケア・コーピングの取り組みを記録する機能です。「レパートリー」に書いた行動に実際に取り組んだ時は、その結果、どれくらい気分が改善されたのかを「セルフケアメモ」に記録してみましょう。
セルフケアメモは、「ストレッサー・きっかけ」「実施する(した)セルフケア」「ふりかえり」の3つの質問に回答すると作成されます。ストレスが発生した時に、どんなコーピング・セルフケアを実施したか、どれくらい気分が改善したかを記録しておくことができるので、どんな時に、どんな行動をすると自分の気分の改善につながっているのかを可視化することができます。
セルフケアのレパートリーを増やして管理したり、どんなことをすると気分の改善度合いが大きいのかを記録しておくことで、自分に合ったセルフケアを見つけることができます。
このように、先ほど説明した一連のコーピングをアプリで記録し、管理することができるので、ぜひ試してみてくださいね。

デジタル認知行動療法アプリ「Awarefy」
日々のメンタルケアを、アプリで取り組みませんか?
「Awarefy」は、日々感じたことを簡単に記録でき、感情や体調の変化を見える化します。マインドフルネス瞑想の実践や、心の働きについて学べる200種類以上の「音声ガイド」も充実。認知行動療法に基づく安心の機能で、あなたのメンタルケアをサポートします。
感情を見える化して、自分をもっと理解する。心のセルフケアアプリ「Awarefy」をぜひお試しください。
Awarefy の Webサイトはこちら:https://awarefy.app/
この記事では、ストレスのセルフケアの方法の一つとして注目されているコーピングについて紹介しました。自分にあったやりかたで、ストレスのセルフケアに取り組みましょう。
ストレスのセルフケアとして、コーピングリストは思っていたよりも気軽に取り入れられそうです。
ストレスを解消するための対処法がストレスの原因になっては本末転倒ですからね。できるところから、気軽に始めてみましょう。

気軽な心ケアとより良い生き方をコンセプトに、マインドフルネス、ACTのワークショップ・イベントを一般・企業向けに開催している。