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「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)」。対人関係が苦手・特定のものに強いこだわりがあるといった特徴をもつ発達障害の一つで、人によっては社会生活に深刻な支障をきたす場合も。近年では、子どもの頃に気づかれずに大人になってから診断される「大人の自閉スペクトラム症」も話題になっている。

そこで今回は、長年自閉スペクトラム症の研究を続け、自閉症支援の新しい手法を考案した大島郁葉先生に取材。その特性やケアの方法、当事者への寄り添い方について伺った。

以前、自閉スペクトラム症の方が書いたエッセイを読んだことがあるのですが、自分の“当たり前”とは違う世界を生きているように感じました。今回は基本的なことをはじめ、当事者の方たちとの関わり方についてもぜひお聞きしたいです。

対人関係が苦手で強いこだわりを持つ彼らの特性には、多くの誤解や偏見があります。今回はそんな誤解を解くためにも、自閉スペクトラム症の正しい知識や捉え方やについてお伝えしていけたらと思います。

対人関係の困難さと強いこだわりを持つ発達障害

——まずはじめに、「自閉スペクトラム症」という言葉にあまり馴染みがなかったのですが、「自閉症」の呼称が変わったという認識で合っていますか?

はい。これまで「自閉症」や「広汎性発達障害」、「アスペルガー症候群」などそれぞれの名称で呼ばれていた発達障害の疾患を、まとめて「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)」と表現するようになりました。

——よく耳にする「アスペルガー症候群」も、自閉スペクトラム症に分類されるんですね。

そうなんです。アスペルガー症候群は、自閉症の症状を持ちながら、知能や言語の遅れがないケースを指します。あえて区別する必要があるときには、「高機能自閉スペクトラム症」と呼ぶこともありますね。しかし、正式名称はあくまで「自閉スペクトラム症」となります。

——では、自閉スペクトラム症の具体的な症状について教えていただけますか?

診断基準として、2つの中核症状(=必ず現れる症状)というものがあります。まず一つは「対人関係の困難さ」。人付き合いが苦手だったり、コミュニケーションを取ることが難しかったりする症状ですね。

そしてもう一つは「限定的・反復的行動」で、こだわりが強くて一つのものに執着したり同じことを繰り返したりする症状です。

この2つが揃って初めて「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)」と診断される可能性が高くなります。そのほかにもいくつかの特徴的な症状があります。

ですが、こう聞くと「自分もそういう性質を持っているな」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。実際にこのようなタイプの人はたくさん存在していますし、これだけだとまだ自閉スペクトラム症とは言えません。

——2つの中核症状が揃っているからと言って、必ずしも自閉スペクトラム症とは限らないんですね。

はい。診断のポイントは、これらの症状によって「社会生活に具体的な支障が出ているか否か」です。中核症状の程度が強すぎて社会環境との兼ね合いが上手くいかず、自分も周囲も困ってしまうような状態になると、自閉スペクトラム症と診断が付きます。

自閉スペクトラム症の診断が付く人は、人口で言うと100人に約2~3名と言われています。多くても人口の5%以下ですから、圧倒的なマイノリティですよね。

ちなみに、ASDの特性は持っているけれど診断が付いていない方は、100人に約10名いると言われています。

——なるほど。たとえば一般的な「こだわりが強い人」と比べると、自閉スペクトラム症の診断が付くのはどのくらいのレベルになるのでしょうか。

こだわりの部分だけで判断するのは難しいのですが、たとえばゲームしかやりたくなくて不登校になってしまうとか、特定の話題が合う人としか喋りたくないから自分のクラスに行かなくなるとか。そこまで極端なこだわりになると、生活に支障が出るレベルの度合が強いので診断の可能性は高くなると思います。

——自分の意志でコントロールできるようなレベル感ではないということですね。

多くの自閉スペクトラム症の方はフレキシブルな対応が難しいので、知らないものや慣れていないものが大嫌いなんです。食べたことがないものは絶対に食べたくないとか、外国には絶対に行きたくないとか。

一方で、同じものが好きだから毎日同じ道を通ることが快感だったり、ルーティンな仕事や暮らし方に幸せを見出したりしている方もたくさんいらっしゃいます。

特性は生まれつき。しつけや育て方による要因はない

——発達障害というと脳に関わるイメージがありますが、自閉スペクトラム症を発症するメカニズムというのは?

実は、今のところまだはっきりしていません。ただ、いくつかの仮説としてわかってきているのは、遺伝的要因で起こる脳機能障害だということ。

両親のうちどちらかが自閉スペクトラム症の場合、子どもに遺伝する可能性はそうでない両親よりも高く、一卵性双生児だとかなりの割合で両者ともASDである可能性が高かったりと、遺伝的な要因が大きいとは言われています。環境要因としては、第一子であったり、受精時の父親の精子が高齢だったりすると、ASDになりやすいという研究結果もあります。

一つ言えるのは、生まれてからの教育的環境によって発症するものではなく、生まれつきの特性だということ。育っていく過程で不適応(=環境への適応ができず、強い生きづらさを抱えること)になるか否かという分かれ道はありますが、発症自体に親のしつけや育て方は関係ありません

——そこを誤解されている方は多いかもしれませんね。自閉スペクトラム症の方は、注意欠如・多動症(通称 ADHD)を併発しやすいという話を聞いたことがあるのですが、これは事実でしょうか。

そうですね、約60%の確率で併発すると言われています。発達障害には自閉スペクトラム症の他に、「限局性学習症(SLD)」や「注意欠如・多動症(ADHD)」などがありますが、これらはだいたい重なりあっているもので、一つの特性だけ持っている人の方が少ないです。

大人になってから気づく「大人の自閉スペクトラム症」

——自閉スペクトラム症自体は生まれつきの特性ということですが、先生が研究されているご専門の一つに「大人の自閉スペクトラム症」があります。これはどういうものなのでしょうか。

今日(こんにち)の大人の自閉スペクトラム症は、「レイトダイアグノウシス(Late diagnosis)」と呼ばれる、成人してから自閉スペクトラム症だと診断された方たちを指していると思います。

一番多いのは、子どもの頃から学校などで強いストレスや生きづらさを感じながら過ごしてきた人が、大学入学や就職などライフステージの変化で環境が大きく変わったことをきっかけに、鬱や不安症を発症してしまい、そういった精神症状を主訴に精神科に行くのですが、精神科できちんと調べてみたらそのような症状の背景に発達障害があったというパターンですね。

——なるほど……。「何で自分だけこんなに生きづらいんだろう」と思っていたら、実は自閉スペクトラム症だったということもあるんですね。

はい。先ほども言ったように、自閉スペクトラム症自体は生まれつき持つ特性なので、大人になってから急に発症するものではないんです。

だからもともと自閉スペクトラム症として生まれたけれど、子どもの頃に気づかれないまま大人になってしまったということ。かなり遅い人だと、30~40代になってようやく診断されるケースもあるんですよ。

——なんと……。子どもの頃に気づかれないまま成長してしまうという事象はなぜ起こるのでしょうか。

自閉スペクトラム症の子どもの約半分は知的障害を伴っているので、通常だと3歳児検診などで気づくタイミングがあります。一方で、残りの約半分は知的障害を伴わないので、気づかれないまま成長することが多いんです。

さらに一口に自閉スペクトラム症といっても、受け身型や積極型などいろんなタイプの方がいます。たとえば受け身型のタイプで多いのは、いつも大人しくにこにこしていて、友達がなかなかうまく作れなくてもきちんと学校に来ている子。

本人は孤独を抱えていたり、頼まれごとをされると断れなかったりして苦しいけれど、大人からはなんとなくクラスに馴染んでいるように見えてしまう。だからなかなか気づいてもらえないのです。

——本人にも自閉症スペクトラム症の自覚がないですし、それが普通だと思っていると周囲にSOSを出すことも難しいですよね。大人になる過程でも、さまざまな困りごとが起こりそうな……。

そうなんです。高校までは何とかやり過ごしても、大学に進学したり社会に出たりするとゼミ選択や就活によって急に自発性を求められるじゃないですか。すると、受け身型のタイプの人は、自分で何をどう選んだらいいか全くわからなくてどんどん苦しくなってしまう。精神的に潰れてしまう人も少なくないですし、その中には名門大学に通っているような方もたくさんいます。

あと女性の自閉スペクトラム症の方で多いのが、子育てに困ってしまうケース。子どもの成長に合わせてコミュニケーションは変化していきますよね。最初は、なんでも褒めてあげられるけど、しつけが必要な年頃になると、「ご飯を全部食べられたら、いちご食べていいよ」のような制限も重要になります。ですが、彼女たちは子どもの発達に合わせてコミュニケーションを変化させることが難しく、子どもの関わり方そのものに悩んでしまうことがあります。

さらに特定のことに関してこだわりが極端に強いので、「母乳じゃなきゃダメ」とか「有機野菜を食べさせなきゃ」のようなこだわりから離れられず、臨機応変に対応することができないケースも多いですね。

“普通の人”になるための苦しい対処「社会的カモフラージュ行動」

——では、自閉スペクトラム症だと診断されないまま生活をしている方たちは、理由もわからずに苦しい思いを抱え続けているということでしょうか。

そうですね。先ほどのような外在化している問題以外にも、孤立感や人と違うことの恥ずかしさといった内在化された心の苦しさと葛藤している方は多くいらっしゃいます。

たとえば思春期以降、周りが恋愛や流行のファッションなどの話で盛り上がるようになると、全く興味が湧かないけれど、一生懸命勉強して話を合わせたりとか流行りのものに迎合したりとかするんです。

本当はもっと人と違うものが好きなんだけど、自分の今いる社会に適応するために、本心を隠して周囲に合わせてしまうんですね。それを「社会的カモフラージュ行動」と言います。

——「社会的カモフラージュ行動」。聞きなれない言葉ですが、具体的にはどういう意味なんでしょうか。

自分が“普通の人”に馴染むように、周囲の人の振る舞いをまねることを指します。彼らには「自分は興味の持ち方や人づきあいの仕方が他の人とは違う」という自覚があるからこそ、頑張らないと差別されて嫌われてしまうと思って過剰に適応しようとしてしまいます。

上司にすぐにお酌しに行って無理に社交的な会話をしたりとか、好みじゃないけど最新のファッションを身に付けたりとか、自分の価値観に蓋をして、みんなに迎合するような発言をしたりとか。それ自体は一般的にもあることだけど、彼らにとっては選択の余地がなく、差し迫ってやっている行動なのです。

こだわりが強い彼らにとって、社会的カモフラージュ行動はとっても苦しいこと。自分がやりたいからやっているのではなく、“普通の人”と同じスタートラインに立つためにやむを得ずやっていることなんです。

——なるほど……。わたしたちは話半分で流したり適当に合わせたりできるけれど、自閉スペクトラム症の方たちにはそれがすごく体力を消耗する行為になるということでしょうか。

はい。彼らはとにかく全身全霊でやってしまうので、家で一人になるとぐったりしてすぐに寝てしまうという話も聞きます。

先程の例でいうと、「上司にはお酌をしなければならない」というのを、わたしたちは「なんとなく減ってきたな」と気付いたらその場でどうするかを判断しますが、自閉スペクトラム症の方は、なんとなく察するということが難しいので、常に意識を張り巡らせてタイミングを伺わなければならないというイメージです。

友達との話に合わせる場合も、相槌を打つタイミングを伺って、ここぞという場面で「そうだね!」と言うとか。注意資源をすべて使い果たすイメージですね。

——社会的カモフラージュ行動をせざるを得ないのは、どのような社会的な問題があるからなのでしょうか。

一つは、社会の自閉スペクトラム症へに対するスティグマ(差別・偏見)が関係していると思います。最近だと、環境感受性が高いという特性を持った人を指す「HSP」という言葉はかなり広まって、むしろ自分がそうだと言いたがる人も多いですよね。でもASD(自閉スペクトラム症)の方たちは自分からあまり言いたがらないし、ASDと診断されることを嫌がる人も少なくありません。

それは、周りの人から「空気が読めない」とか「人の気持ちがわからない」嫌なヤツという見られ方をするから。そう思われないために過剰適応してしまっている彼らを見ると心が痛いなあと……。

だからこそわたしは、こういった自閉スペクトラム症の方たちが今の社会でどうやったら過剰適応せず、ASDらしい幸せを手に入れて、QOLを保って生きていけるかというテーマで研究をしているのです。

問題に気づいてケアする支援プログラム「ACAT」

——先生の研究テーマにも繋がってくると思うのですが、自閉スペクトラム症の治療について教えていただけますか?

自閉スペクトラム症の「自閉スペクトラム」の部分は生まれ持った“特性”ですから、薬で治療することはできませんし、そもそも治療するような有害なものではありません。

自閉スペクトラム「症」である場合、その人が日常生活をする上で問題が生じているということを意味していますから、その場合には特性を理解して適切な対応や環境調整を実施することで、生活上の困りごとを改善していくことができます。

——先生は認知行動療法を活用した新しい支援の手法を開発されたとお聞きしました。これはどういったものなのでしょうか。

「ACAT(Aware and Care for my Autistic Traits)」と言って、児童思春期以降に自閉スペクトラム症の診断を受けた本人とその家族に向けて行う心理教育プログラムです。

自閉スペクトラム症の診断そのものは、国の制度として用意された様々な支援を受けられるほか、自己理解やアイデンティの形成、適応感の向上、キャリア形成などに繋がる次のアクションができるので、それ自体はとても価値があること。だからこそ、診断を無駄にしないことが重要です。

そのためにACATでは、自閉スペクトラム症の方が、社会的カモフラージュのように苦しい対処ではなく、自分の特性を知った上でラクな認知や行動の対処法を獲得して、日々の不適応の軽減に繋げていけるような内容にしています。

——もともと「ACAT」が生まれた背景というのは?

自閉スペクトラム症だと診断されても、それが何かよく知らないという方がまだまだ多いんですよね。そこで自閉スペクトラム症にまつわるテキストや教科書を見てみると、「空気が読めない」とか「共感できない」というように、欠損的なモデルとして説明している。わたしはそれが嫌だったんです。

彼らは一般の人と脳機能のオペレーションシステムが違うだけで、“欠損”ではない。だからあえて“特性”という言葉を使用して、ご本人や家族にどんなオペレーションシステムなのかを理解してもらうことを一つの目的にしています。

社会的なスティグマや知識不足を解消し、診断を受けて自分を理解していく重要性を知ってもらえたらなという思いもあります。

——プログラムはどんな流れで進んでいくのでしょうか。

まずは、問題の気づきのために自閉スペクトラム症の特性についてこちら側から情報提供します。そこで自分の特性をメタ認知してもらう。

するとたとえば「学校が大嫌い」だと思っていたけれど、それは「自分の意に沿わないことをするのが嫌いだから、学校が大嫌い」だったんだという自分自身のこだわりが見えてくるんですね。そこからその子のこだわりパターンを抽出して、親御さんに共有しながら問題をケアするための特性の対処を考えます。

こだわりに対して「どこまでだったら辛くないのか」という線引きをしつつ、担任の先生に共有して配慮してもらうこともあります。診断があることで、たとえば「2日に1日は、午前中だけ出席して帰っちゃおうね」とか。自閉スペクトラム症を持つ人として、その人の特性に基づく配慮のなかで守られながら適応していけるといいなと思っています。

——基本的にはカウンセリングで心理士の方と対話をしながら一つひとつステップを踏んでいくというイメージでしょうか。

そうですね。相手が大人の場合は一対一でやりますが、お子さんの場合はその子と保護者の方とセラピストの3名で対話をします。

保護者の方は「どうにか学校に馴染んで欲しい」とか「どうにかこの子のこだわりとってほしい」とおっしゃるケースが多いのですが、保護者の方のそうした思いが、かえって子どもを苦しめてしまっている場合もあります。ですので、「こだわりはとるものじゃなくて活用するものだから、どう活用していくのか一緒に考えましょう」という形でいつもスタートしています。

——たしかに、親御さんの理解も大切ですよね。こちらの「ACAT」はすでにカウンセリングの現場でも実際に使われているんですよね。

はい。2015年のイギリスのプログラムを参考に作って、2018~2020年に検証が終わったので、今は実際に療育や医療施設を中心に使っていただいています。

わたしの希望としては、ある日自閉スペクトラム症だと診断がついた方たちに使ってもらえたらありがたいなと。診断にショックを受けるお子さんも少なからずいますし、親御さんが「ASDだからダメなんだ」と叱るときの言葉に使ってしまうことも多いので、親子間での理解を深める意味も込めて、このプログラムがどんどん広がっていってほしいなと思いますね。

共存のポイントは、彼らの特性や理屈を見つけること

——ではもし仮に、自分が自閉スペクトラム症かもしれないと思ったときに、どんなアクションを起こすべきですか?

まずは自分の苦しさが自閉スペクトラム症からきているのかを判別することが大事だと思うので、発達障害を診てくれる医療機関や専門家を探すことですね。

カウンセリングからスタートしてもいいですし、診断自体は医療機関でしかできないのでダイレクトに飛び込んでしまってもいいと思います。ただ発達障害の専門医が少ないというのも事実なので、HP等できちんと明示しているところを選ぶと良いと思います。

——反対に、身近に自閉スペクトラム症の傾向の人がいた場合、周囲の人たちはどのように接するのが良いでしょうか。

実はわたしが今一番フォーカスして考えていることですが、マジョリティ側である健常者の方たちに、「世の中には多様なタイプの人がいる」ということを知ってもらえる機会をもう少し作れたらなと思っています。

マジョリティからすると、自閉スペクトラム症の彼らはわがままだったり、気が利かずに余計なこと言ったりするように感じるかもしれません。全然人に共感しない冷たい人にも見えるかもしれない。でもそれはそもそも脳の仕組みが違うだけなんです。

エモーショナルなノリでは共感しにくいけれど、ロジカルに説明すれば「なるほど!」と理解し、共感します。脳の仕組みが違うぶん、思考プロセスの辿り着き方が違うだけなので、自分たちとノリが違うからといって「変だな」って簡単に差別してほしくないと思っています。

——なるほど。「障がいを持っている」ではなく「脳の仕組みが違う」と認識するのは、一つ心持ちとして重要かもしれませんね。

もし自閉スペクトラム症の人が何かネガティブな反応をしていたら、そこには必ず彼らなりの理屈があるんですね。たとえば「買ってあげた服を着たがらない」としたら、それはわがままではなくて、実は「感覚過敏で、タグがちくちくする気がして気持ち悪い」かもしれないし、「色にこだわりがあって、黒と黒の服で合わせないとどうしても気が済まない」のかもしれない。

わたしたちからすると摩訶不思議に見えるかもしれませんが、彼らには理屈が通っていること。そこが理解できればわかり合えるはずだからこそ、対話をしながらその人の特性や理屈を探ってもらうのが共存のポイントかなと思っています。

——彼らの特性を知るためできることとしてまず思いつくのは本や記事を読むことですが、他に何か手段があれば教えて下さい。

当事者本人に直接聞いてみるのも全然ありだと思いますよ。もちろん、ネガティブな意味合いで聞くのではなくフラットに。「侮辱してるわけじゃなくて、あなたの世界を知りたいんだ」って言ってみて、「良いよ」って言われたらぜひ聞いてみてください。

やはりわたしたちとしては、一般の方に自閉スペクトラム症を考えてもらえるきっかけになるような啓蒙が大事だと思っていて。アメリカでは2016年に世界的に有名な子ども向けテレビ教育番組で、自閉症の女の子のキャラクターが登場しました。番組の中でもはっきり「自閉症」ということが言われていますし、行動は自閉スペクトラム症の特性そのものなんです。そういう形で自閉スペクトラム症の特性を知れたら、当事者への向き合い方も自然と変わっていくと思います。

その点、日本ではまだまだ自閉スペクトラム症自体きちんと認知されていない状況なので、この番組のようなコンテンツやメディアがあれば、今後関わっていきたいなという気持ちでいます。

——最後に、長年研究を続けられてきた大島先生が今「自閉スペクトラム症」について思うことを聞かせてください。

わたしは自閉スペクトラム症の人が好きで魅力を感じているので、研究しているんですよね。

彼らって非常に誠実で、ウソがつけなくて、憶測が苦手だからあまりずるいこともできない。ふだんそういう方たちに毎日触れて生きているので、健常者と呼ばれる人たちと接するとたまにびっくりします。なんだか器用だなあって(笑)。

自閉スペクトラム症の方たちは、言いづらいこともはっきりと誠実に言ってくれるし、一回約束したことは必ず守ろうとしてくれる。ルールを守るので頑なだから、たまに面倒なこともあるけれど、「AのときはAじゃないと」と貫こうとする人間性の部分はとても素敵で魅力的だなと思うんですよね。

だから自閉スペクトラム症の方たちにはその素敵な部分をぜひ自覚してほしいですし、彼らの幸せに繋がるサポートをこれからも続けていきたいと思っています。

「欠損ではなく特性」であり「脳の仕組みが違うだけ」。違いがフラットに理解できました。
自分の知らない世界を覗いてみたい!という気持ちになったので、今度自閉症スペクトラム症の方と接する機会があったら、お話を聞いてみたいなと思いました。

本当の意味で、もっと多様性にやさしい社会になったらいいですよね。この社会で共に生きていくためにも、当事者自身もそうでない方も含めて、自閉スペクトラム症についての理解を深めてもらえたら嬉しいです。

(聞き手・編集:秦 正顕、撮影:野中 弥真人、文:むらやま あき)

大島 郁葉(おおしま ふみよ)/千葉大学 子どものこころの発達教育センター 講師
臨床心理士、医学博士。千葉大学子どものこころの発達教育研究センター/大阪大学大学院連合小児発達学研究科講師。

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