言葉自体はポピュラーなものの、意外と実態が知られていない「トラウマ」。
一度持ってしまうとなかなかそこから逃れられないというイメージもあるなか、「トラウマは必ず治る」と力強いメッセージを発するのが、日本銀行を辞め、臨床心理士に転身したという異色の経歴を持つ山本貢司先生だ。
今回は、知られざるトラウマのメカニズムやケア、予防のコツについて、じっくりとお話を伺った。

トラウマという言葉は、ふだん気軽に使っているものの、実態はあいまいなまま、ドラマなどで描かれるイメージに左右されている気がします。PTSDとの関係性など、わかっているようで意外とあいまいに理解してしまっています。

フラッシュバックなど、一部分だけが注目されがちですね。今日は、基本的なメカニズムとともに、自分でできるケアや予防、心理療法などについてお話しさせていただきますね。

トラウマ・PTSDとは?

生涯のなかでトラウマを抱える人は約6割

——世の中には実際、どのくらいトラウマを抱える人がいるのでしょう?

日本ではまだ国内全体の統計データが出ておらず、WHOの「世界保健プロジェクト」で国内11地域のみの部分的な結果が出ています。それによると「生涯のいずれかで、治療が必要なトラウマを抱える」人の割合は1.9%になります。一方で大規模な疫学調査ですと、Kessler(1995;2005)によるアメリカの大規模調査の結果では、6.8%という数字が出ています。

——40人のクラスに2〜3人はいる、という感じですね。

もう少し広い概念で、治療が必要かどうかにかかわらず、トラウマ自体を持っている人となると、約64%にアップします(同じ調査による)。

こうしたデータからもわかるように、トラウマ体験は日常にあふれているといえます。

トラウマ・PTDSが起きる原因

——トラウマはなぜ起きるのですか? 子どもの頃の辛い経験などが最も多い原因なのかなというイメージですが。

そうですね。私のオフィスでは、やはり逆境的な家庭環境に起因する方が多いです。家庭の中での虐待…、虐待というと言葉の印象が強いですが、従来型の身体的な暴力だけでなく、「教育虐待」などの精神的・心理的な圧力によるものもあります。

——教育に熱心過ぎる親が勉強や習い事を強いて、子どもを追い詰めていくというものですね。子供のためを思ってなのかもしれませんが、毒親という言葉も話題になりました。

子どもにとっては生物学的にも社会的にも親や先生が絶対な存在です。子供は周囲との関係においては圧倒的な力の差の中で生きているんです。そのため、親の一方的な関わりからくるストレス体験がトラウマ化する場合もあるんです。

一方、大人は仕事の中でトラウマを負いやすいですね。私のところに相談が来る方で、多いのが例えばIT関係の方ですね。

——IT系!? 僕もそうですが、確かに心理的なプレッシャーが強い業界かもしれません…。

もともと納期や予算などのストレスが強いなかで、取引先や上司からその人の耐えられる限界以上の圧力を加えられると、そのストレス体験が簡単にトラウマ化してしまいます。大人は社会的なしがらみがすごく強いので、その圧力で動けなくなってしまう。

トラウマとコロナの関係について

——この2年でいうと、コロナ禍の影響はありますか? 

私の周囲では、コロナ禍の社会情勢やコロナに罹患した体験がトラウマを直接引き起こした事例はあまり聞きませんが、コロナ禍がその人が過去にすでに持っていたトラウマに揺さぶりをかけるような現象はあります。

トラウマとPTSDの違いについて

——ちなみに、トラウマはいわゆるPTSD(※1)とは違うのでしょうか?

基本的には同じものです。PTSDは心的外傷後ストレス障害のことですが、Post Traumatic Stress Disorder の一部だけが抜き出されて「トラウマ」と使われています。

ただ世の中の使い方を見ると、PTSDは臨床的に治療が必要なもの、トラウマはまだそこまで治療が必要ではない体験も含めて使われている印象がありますね。

トラウマのメカニズムと症状

過覚醒と低覚醒を行き来するのがトラウマ反応

——トラウマ的な体験が起きている時、一体何が起こっているんでしょうか?

これは1995年にポージェス博士が提唱したポリヴェーガル理論に詳しく説明されています。まず、人間がストレスを受けたとき、主な身体反応として、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールという物質が出て、交感神経が急激に上がっていきます。この上がっていく過程がストレス反応なのですが、トラウマはさらに限界超えて上がりきったところから一気に落ちていくまでの過程です。

凍りつくような反応や、恐怖のあまり何も言えず、動けなくなる…。この動けない反応が出てきたとき、その体験はトラウマ化していると考えます。

—なるほど、動けなくなる状態。

野生動物が外敵に襲われたとき、交感神経が一気に上がって覚醒状態が高まり、闘ったり逃げたり、動きのある防御反応をとります。これが過覚醒の状態です。

しかし、闘うことも逃げることもできないほど外敵が強いとき、交感神経は限界に達して、今度は闘うことも逃げることもしない、いわゆる動かない状態で身を守ろうとします。そうすると、背側迷走神経系の副交感神経のスイッチが入り、交感神経が一気に下がります。そのとき、心拍数も呼吸も体温も低下して、一種、仮死状態に入ります。これが低覚醒の状態です。

——それは生存本能として、ある意味自然な現象ともいえる?

その通りです。トラウマの症状は個体の生存本能に基づく生来の防御反応なんです。過覚醒と低覚醒が波のように繰り返されていくことには、生存という点で重要な意味があるんです。

過覚醒では、体が常に警戒体勢になり、ちょっとしたことを危険だと感じる状態になります。これは、脳の扁桃体が危険だというサインを出して、戦ったり逃げたりするために交換神経を上げるからなのですが、これには万が一の事態に備えるという意味なんです。

このとき過去の記憶との照合が脳内で実行されるとフラッシュバックも起きてきます。心臓がバクバクして呼吸が速くなり、人によってはパニック障害になったり、頭も真っ白になっていきます。そして、危険が去った平常時になっても扁桃体が危険信号を出し続けてしまう問題がPTSDの状態ということなんです。

——過剰な警戒状態ですね。一方で、動けなくというのは…?

これは背側迷走神経系の副交感神経の働きで低覚醒になった状態です。いつも気分が上がらない、体が重い、ご飯を食べても味がしないなどの感覚麻痺や鈍麻した症状が見られ、寝ても寝てもゆったりできず、12〜13時間寝つく人もいます。気を失っている状態に近いですね。知覚が遮断されると無感覚になり、解離といわれる状態になります。

先ほど伝えたとおり、トラウマの症状は、こうした過覚醒と低覚醒のアップダウンが波のように繰り返されていきます。

トラウマ・PTSDを解消するためには自己調整力が必要。

——アップダウンの波はどうすれば平常に戻るのですか?

アップダウンの状態を平常に戻すには、腹側迷走神経系という部分の副交感神経の働きによる自己調整力が必要です。これは、コミニュケーションするための神経なのですが、いわゆるリラックスしたり、ほっとしたりする副交感神経でもあります。

普通なら、自然に、もしくは周囲の環境的なリソースでサポートされると、腹側迷走神経系の副交感神経が働いて自己調整されていくのですが、その働きが足りないと、交感神経や先ほどの背側迷走神経系の副交感神経が優位となり、治療が必要とされるトラウマ・PTSDの状態になっていきます。

——治療をせずに、自己調整が働かない状態でずっと放置しておくとどうなるんでしょうか?

ケースバイケースですが、交換神経の高い過覚醒の状態が続くと、体に炎症反応が起き、免疫機能が低下し身体の病気になっていきます。一方、低覚醒が強い場合は、意識の遮断やマヒが起こり、意識が分断されます。最終的に分断された意識が大きくなると、解離性同一性障害、昔でいうところの「多重人格」の状態におちいるケースもあります。

治療が必要なトラウマ・PTSDの基準とは?

トラウマがどんな状態になったら、専門家に相談するべきか?心身の疾患との関係性

——治療が必要なトラウマかどうかは、どう見分けたらいいのでしょう。

そのトラウマ反応が日常生活をどれだけ阻害しているか、その程度によって決まってきます。うつ病の方とも似ていますが、睡眠が取れない、不安やパニックが強くて電車に乗れない、会社に行けないといった状態で判断していきます。

実は、身体の疾患で内科や外科にかかっている人に、トラウマが隠れている場合もあって、身体疾患からトラウマの存在が判明することもありますね。

——隠れたトラウマが心身の疾患に影響している?

はい。トラウマというと、よくフラッシュバック体験などをイメージすると思いますが、フラッシュバックが必ずあるわけではありません。トラウマの大きなメカニズムの中で一部の問題だけが身体にポコッと現れて、心身の疾患が生じる方は多いです。そのような場合は、身体疾患とトラウマの関わりについて自分で気づくことはすごく難しいんです。

——精神的な不調を感じているとき、それがうつ病なのか、トラウマが原因なのか、自分で判断するのも難しそうです。

私の臨床経験ですと、うつ病や不安障害、パニック障害などで医療機関に長くかかってる人は、トラウマを隠し持っている方が多いですね。そういう場合は、薬物治療だけだと根本的な改善が難しいといえます。

ですので、体の不調、心の不調があったら、とにかく医療機関やカウンセリング機関に相談してほしいと思います。できれば、トラウマのこともよく知っている機関だとより良いでしょう。

トラウマやPTSDは、自己診断できるのか?

——以前より、カウンセリングを受けるハードルも下がってきています。

トラウマの有無や治療の必要について自己判断するのは難しいのですが、トラウマの診断基準(※2)にはWHOのICD-11や米国のDSM-5があります(編注:いずれも公式には未訳)。診断はあくまで医師が行うものですので、安易にご自身で判断するのは推奨されませんが、病院などに行く敷居が高いと感じる場合は、英語ではありますが、あくまで一つの目安として、自分がどの程度合致するのか確認してみてもいいかもしれません。

トラウマやPTSDの治療、かかる期間など

トラウマやPTSDは治療できるのか?

——治療が必要なトラウマを抱えてしまったとき、完治や克服はできるのですか?

臨床心理士の立場からは「トラウマは治せる」と考えています。ただ、治すといっても元通りになるという意味ではなく、トラウマを克服して、より強く、より柔軟で、感情を抱える力のある自分になるというイメージです。

もちろん、トラウマの克服にはたくさんの困難が立ちはだかります。治療期間も長期に及ぶことがあります。生活環境の問題や経済的な問題、日常的なストレスイベントなどで治療のための作業が邪魔されて、全ての方がその作業を完遂するとは限らないのが実情です。そのため、トラウマを抱えて、一生それに付き合わなければいけないと思っている方も多いでしょう。ですが、諦めずに治療を続けていくことができれば、理論的にはちゃんと治せるのです。

——逆境を乗り越えた方が強くなる。PTSG(Post Traumatic Stress Growth=心的外傷後ストレス成長)といわれるものですね。

トラウマやPTSDの治療にかかる期間について

——治療の期間はどのくらいかかるのでしょう?

健康に生きてきた方が、トラウマ体験が単回で終わるような事故にあったときのトラウマなどは、うまくいけば10回程度のセッションで介入は終わります。

——10回のカウンセリングセッションなら、そこまで長くないですね。

ただ、あくまでも私の経験ですが、小さい頃から虐待を繰り返されてきたような複数回で複雑なトラウマを体験された方だと、だいたい50〜60回のセッションは必要なので、早くて2年〜3年かかるでしょうか。解離性同一性障害、いわゆる多重人格という病態まで深刻化すると、5年ぐらいは必要になります。セッションは月2回くらいのペースですね。もちろん個人差はありますので、一つの目安です。

解離性同一性障害(多重人格)とトラウマの関係

——多重人格の方が、本当にいらっしゃるんですね。

私のオフィスにも、ほぼ毎日そうした方はいらっしゃるので意外と珍しくはないですね。

たとえば、マラソン選手など競技のために極度の減量を続けていくと、「食べたい」という欲求が切り離されて、別人格として育っていくことがあります。そうすると、その別人格が、生活の主体となっている人格が気づかないうちにスーパーで食べ物を盗んでしまったりすることが起きます。きちんと社会生活を送っている自分ではなく、ただ衝動性のある自分だけの人格がでてくる場合があります。

基本的には、解離には二つのパターンがあります。

一つ目のパターンは、トラウマ体験によって恐怖や絶望感を抱えた時の感情、感覚、思考、イメージ、行動などの構成要素が意識の主体から切り離されることで、トラウマ体験に耐えようとするものです。そして、トラウマ体験が繰り返されると、その切り離された要素が集約されて人格としてまとまっていきます

二つ目のパターンは、乳児期に乳児の愛着反応に親の応答が極端に少ないときに、乳児の愛着反応が切り離されて、愛着そのものや愛着への応答不足に伴う苦痛が別人格として育っていくものです。乳児は極めて脆弱ですので、親の応答のなさで簡単に解離することは、2006年の「能面の実験」で証明されています。

能面の実験:子どもに反応していた母親の顔が、突然に能面のような無表情になります。 赤ちゃんはすぐに母親の注意を引こうとしますが、たまらなくなって最終的に泣き出します。 赤ちゃんであっても、母親の関心を得られなかった赤ちゃんが、強い不安感を覚える事がわかります。

——抑圧された欲求とか切り離された感情などが人格化することがあるのですね。もう少し軽症の方の場合、どんな方法があるのですか?

比較的、健康度の高い人向けの支援法としては、認知行動療法とEMDRのトラウマ治療を行います。認知行動療法では、トラウマの記憶や身体感覚に自分自身をさらして、過覚醒になる反応を落ち着かせていく曝露療法という方法があります。EMDRというのは、目を左右に動かすという眼球運動を使って、脳内の情報処理を活性化させ、トラウマ体験を加速的に処理する治療法です。この二つはWHOでも治療効果が認められています。

さらに、別人格や別モードがあると、社会生活を送っている普段の自分の意識とは違うところにトラウマが収納されているので、それをちょっと引っ張り出さなければいけない。その時には多少、トランス状態に入ってもらって、別人格や別モードに出てきてもらって介入を行う必要があります。

——別モードとは別の自我ということですか?インナーチャイルドのような?

そうです。そうした隠れたモードがある場合には、自我状態療法やスキーマ療法という技法や、ときには催眠を使うこともあります。この場合の催眠は、意識を少し内側に向けてボーッとしてもらうような軽度のトランス状態に入るためだけに使います。

——トランス状態とは外の感覚を遮断して、中に集中するイメージですね。

日本語だと変性意識状態というのですが、大脳皮質の活動を弱めて、身体感覚の世界に入っていく状態のことです。トラウマが、普段は意識しないよう日常から切り離されたところにあります。日常の意識をちょっと緩めないと、そのトラウマにアクセスできないのです。

——多重人格までいってしまった場合、どのように支援していくのですか?

たとえば、自我状態療法では、軽度のトランス状態に誘導した上で心の中にイメージで会議室を作ってもらい、そこにいろいろな人格に出てきてもらってミーティングします。誰がいるのか、どのような気持ちを抱えているのか、今後どうするのか、解離したまま生きていいのか、といった話をしてもらうのです。

——それぞれの人格が話し合って、少しずつ繋いでいくような?

そうです。記憶、知覚、意識といった、通常は連続してもつべき精神機能が途切れている状態を「解離」というのですが、別の自我状態と接すれば接するほど、解離が減っていきます。

別の人格たちが話し合うほど解離が薄くなるので、そのうえで、どういう自己調整をすればいいのかを新たに学んでもらいます。解離ではなく、より健康的な防御方法を学び、人格を一つにまとめて大丈夫だよと、自分を安定させていくのです。

トラウマ・PTSDへのセルフケア。大切なのは、自分が自分に寄り添ってあげるこ

自己調整力を高めるためにできること①「自分への共感」

——軽度のトラウマの場合、自分で実践できるケアはありますか?

トラウマの症状は過覚醒と低覚醒のアップダウンを繰り返すというお話をしましたが、アップダウンを真ん中に戻していく作業が大切です。この自己調整の力がアップダウンの力より強ければ、ほとんどのトラウマは自然に解消されていきます。

——アップダウンした状態を真ん中に戻す…、自分を落ち着かせる作業ですね。

そうです。腹側迷走神経系の副交感神経を働かせて、身体をゆったりとした状態にする。感情的な部分では、共感という力が必要になってきます。人と繋がって共感してもらうのもいいですが、トラウマ体験を一般の人に聞いてもらうことは難しいことです。自己調整という観点からは「自分が自分に共感する」ことが有効です。

——自己共感とは「ありのままの自分」を認めるような?

はい。具体的には、まず、自分が考えていること、感じていること、そこから出てきた身体反応を振り返る作業をし、それに気づく状態をつくります。

そして、認知的には辛い時には辛い、苦しい時には苦しい、疲れた時には疲れたねと、無条件に自分を認めてあげる。感情的には共感的な言葉をかけて自分の気持ちをそのまま感じてあげる。身体的には実際に体の力を抜いたりして、活性化もしくは硬直化した身体を落ち着かせてあげる。これらの認知と感情と身体の作業をしていくと、自己共感の状態になっていきます。

——無理に治そうとか、上げようとかするのではなく、まずその状態を認める。

そうです。温かい気持ちで自分が自分に寄り添ってあげる。たとえ、どんなネガティブな気持ちや攻撃的な気持ちであっても寄り添っていく。そこまでして、神経系が初めて落ち着いていきます。哺乳類の脳はそう反応するように作られているんです。無理にポジティブになろうとすると、逆に交感神経が刺激されて、覚醒状態を高めてしまいます

自己調整力を高めるためにできること②「タッピング」

身体的なケアは、ストレッチやヨガ、呼吸法など多数の技法があります。世間的にも健康法として知られている方法もいいでしょう。その中で簡単な方法を一つ挙げるとすると、自分の胸のあたりを軽くトントンとタッピングして、体の神経をほぐしてあげる方法です。これは、とても使いやすいと思います。赤ちゃんをトントン、ヨシヨシとあやすようなイメージですね。腹側迷走神経系の副交感神経を刺激してくれるんです。

——なるほど、赤ちゃんをトントン、ヨシヨシするように自分に寄り添う。

赤ちゃんをあやす行為は、実は人の自己調整の始まりなんです。昔は抱っこしない育児という誤った育児法が流行った時期がありました。そうしたこともあってか、自己調整力が弱っている大人がとても多いと感じます。タッピング、つまりトントン、ヨシヨシは、大人もぜひやってほしいケアですね。

山本貢司先生の今後の展望

——ストレス反応をトラウマ化しないために必要なのは、自己調整の力、つまり自己共感なんですね。最後に、これからのトラウマ支援の展望について教えてください。

トラウマやPTSDを治らない病と捉えている人が多いのは、トラウマ治療がまだまだ研究途中という部分があるからだと思います。トラウマを持った人は、その苦しさをどうしたらいいかわからずに迷っていることがすごく多い。どうせ治らないからと、薬物やアルコールに走ることもある。

でも、もし治るんだとわかれば、そこで治療に行こうと思う人が増えるはず。ちゃんと条件が揃えば治るということを、世の中にもっともっと知ってもらいたいと思います。

そして、これは私見ではありますが、そのためには、支援する側はトラウマのメカニズムを描き出し、そのメカニズムに応じた適切な技法を統合的に使うことが必要になってくると思います。

トラウマに関してはたくさんの心理療法が存在していますが、一つの技法だけで対応できることは少ないのが実際だと思います。微力ではありますが、日本のトラウマ臨床をもう一歩進めるために、どのような心理療法にも通じるようなトラウマのメカニズムを体系的にまとめていく研究に、私も意識して取り組んでいくつもりです。

「トラウマは克服できる」という先生の言葉に救われる人がたくさんいると感じました。ストレスを感じたとき、トントンと自分をタップすることも実践していこうと思います。

トラウマ・PTSDは決して不治の病ではありません。なにか不調を感じたら、気軽にオフィスに相談に来てほしいです。トラウマを克服するために一緒に取り組んでいきましょう。

(聞き手・編集:齋藤 理/佐野 佳代子、文:佐野 佳代子、撮影:齋藤 理)

山本 貢司(やまもと こうじ)/田園調布カウンセリングオフィス 所長

臨床心理士、公認心理師

金融機関を退職後、横浜国立大学大学院/教育学研究科/教育人間科学部/学校教育専攻/臨床心理学コースに進学。心理系大学院での講師、うつ病休職者の復職支援事業などにも携わりながら、臨床心理士を取得。医療機関での多数のカウンセリングを経て、2013年、田園調布カウンセリングオフィスを開設。科学的に実証された技法を用い、統合的な心理療法を行っている。

田園調布カウンセリングオフィス http://www.stress-cbt.jp/

注釈

※1:PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態(厚生労働省HPより)

※2:WHO 判断基準ICD-11(英語) https://icd.who.int/en


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