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お酒やゲーム、ギャンブル…、ちょっとした気分転換だったはずが、気づけば依存症に。依存症は、ストレスフルなこの世の中、誰もが陥る可能性があり決して他人事ではない。一度依存症になってしまったら、ハマり続けるか完全に断つか、その二択しかないイメージの中、「生活の楽しさを維持できるかどうか」という観点も踏まえて依存症の治療に向き合うのが、川崎医療福祉大学・医療福祉学部臨床心理学科助教、横光健吾氏だ。依存症の実態や周囲の人はどう支援できるのかなど、気になる点をじっくりと伺ってみた。

ついスマホを触ってSNSを見るのが習慣になっているのですが、こうしたささいなきっかけから、誰でも依存症になりうるのかなと感じます。

ストレス解消のはけ口からハマってしまう人が、やはり多いですね。当事者や周囲の人々がどんなふうに向き合っていくのがよいか。心理職の立場からお話しますね。

コントロール不可で孤立化…生活に支障が出始めたら依存症を疑ってみる

——依存症とはそもそもどういうものなのでしょう?

依存症と聞くと、お酒、タバコ、ゲーム、ギャンブル、あとはセクシャルなものなどをイメージされると思いますが、タバコなら約2割、お酒なら約5割など、多くの人が体験するものと思います。

誰もが体験するもの、という中で依存症を定義する際には、「嗜好」「趣味」「嗜癖」「依存症」に分けて考えます。

——「嗜好」「趣味」「嗜癖」「依存症」と分けるのですね。

こちらの図がわかりやすいです。

横光先生作成

まず左側の「嗜好」は、たしなむこと、好み。次に「趣味」は楽しみとして習慣的に行うもの。この“楽しみとして”というところが、実は後々、大事になってきます。

趣味の依存度が高くなってくると、「嗜癖」と呼ばれるようになります。習慣が行き過ぎてしまい、行動を抑制することが困難な状態です。そして最後に「依存症」は、嗜癖によって何らかの問題が生じている状態をいいます。

メディアでよく「○○依存症」と見聞きするかもしれませんが、研究者や臨床家はあまり軽々しく「依存症」とは言いません。依存症と呼ぶ際には、「そこに問題が出てきているかどうか」が基準になります

——問題が生じているかどうか、ですか。

たとえば月に100万円をギャンブルで失ったとします。この100万円という金額が生活に支障を及ばすかどうかは、その人ごとに違います。例えば今インタビューをしている秦さんなら生活に支障が出ても、お金持ちの人なら金銭的に余裕があって問題にならないかもしれません。

依存症を考える際の「そこに問題が出てきているかどうか」の線引きは、その人ごとに変わるんです。

——本人が主観的に問題だと感じるかどうかということですね。でもそれだと、本人が問題じゃないと思い込んだり、認めない場合もありそうですが…

そうですね。ただ、ギャンブルなら経済的な支障が必ず出てきますし、お酒なら健康診断で引っかかったり、身体的な問題が現れます。ゲームなら睡眠不足から遅刻したり、仕事のパフォーマンスが落ちたりと、やはりどこかで問題として顕在化してくるんです。

もちろん、この問題というのは、個人の主観的なものだけではなく、周囲からの視点でも考える必要があります。金銭的に余裕があると本人は思っていても、家族が月100万円を失うことを問題視しているのであれば、家族レベルで問題が生じている、と考える必要があります。

——では、「嗜好」から「依存症」へはどのように変化していくのでしょうか?

嗜好や趣味は、そのものごとが楽しいという段階ですね。新しいお酒を見つけてお酒の知識や知見が広がったり、ゲームを通して人とのネットワークが構築されたり。高校生なんかだと、前日の夜にオンラインゲームで集まってプレイをし、翌日「お前、昨日のあれすごかったな」なんて盛り上がることもありますよね。

嗜好・趣味の範囲では、そういう人との繋がりも生まれ、維持されます。ゲームやSNSが現実場面でのコミュニケーションツールとして役に立つわけです。

それが、嗜癖になってくると、ゲームなら時間、お酒なら酒量、ギャンブルなら賭け金が増えて、家族や会社など、他の人から「ちょっと止めた方がいいんじゃないか」と言われはじめます。趣味と嗜癖の間をさまよっている人は、罪悪感を感じて、このとき部分的にでもやめることができます

——それが依存症のレベルになるとどんな困りごとが発生するのでしょうか。

はい。そこから依存症になってしまうと、もうコントールできない状態になります。罪悪感があっても、どうしても続けてしまう。さらに「孤立化」という事態も起きてきます。

ゲームだとわかりやすいのですが、今まではゲームの外の世界でも学校の友達などと交流していたのに、それがゲームの中の友達としか付き合わなくなる。現実の世界から離れてしまうんです。

——現実から離れる孤立化…確かに想像できます。ほかにも依存症の特徴はありますか?

少しでは満足できない「耐性」がつくられます。最初はビール一杯で満足していたのが眠るまでお酒を飲まないと気が済まないとか、最初は30分だけだったYouTubeを、疲れ切るまで見ないと終われないとか。ギャンブルでもお金の賭け方が変わってくる。こういう状態に入っていきますね。

三代欲求を超えて欲してしまう、酒やゲーム…やめられないメカニズム

——依存症のメカニズムについてお聞きしたいのですが、脳の中ではどんなことが起きているのでしょう?

依存症とは、自分の意思で欲望や行動をコントロールできなくなった状態で、そこにはドーパミンという神経伝達物質が中心的な働きをしています

ドーパミンは依存症の状態に限って出る物質ではなく、おいしいものを食べたり、好きな音楽を聞いたり、運動をしたり、あるいは仕事で達成感を得たり、そういったときに出てくる物質です。部位でいうと、主に中脳の腹側被蓋野といったところから生じます。

ドーパミンが出ると、快体験や達成感の感情を得られます。わかりやすいところだと、美味しいものを食べて嬉しいというような感情ですね。脳がこのドーパミンを求めすぎる、つまりその刺激がないと不快な状態になってしまうことが、依存症の状態と言えます。

——お酒やギャンブル、ゲームなど、どの依存症も同じメカニズムなのでしょうか。

基本的に依存症がドーパミンと関係するというメカニズムは同じです。しかし、ドーパミンが出てくる経路はさまざまであるということがわかっています。例えば、ドーパミンに直接働きかけるような経路もあれば、ドーパミンを抑制しようとする神経系が抑制されることで、間接的にドーパミンが分泌されやすくなる経路もあります。旅の目的地に到達するルートが複数あるようなイメージで、経路も所要時間もさまざまなのですが、最終的な到達地点はドーパミンが放出され、それを求めすぎてしまう」というところで、お酒にしろタバコにしろ同じです。

——ちなみに、ドーパミンが出て快の感情がわくのは良いことでもあると思うのですが、依存症になるかどうかはどこが違うのですか?

認知行動療法の視点からお話すると、快の感情は、得るとまた欲しくなる、という性質を持っています。本人にとってメリットがあったり、デメリットが取り除かれると、その行動を続けてしまうんですね。

これはどの嗜癖行動も一緒で、お酒なら嫌な気分が軽減したり、ゲームなら現実逃避、ギャンブルなら興奮や刺激が得られたりと、その結果また欲しくなっていきます。

——それ自体は普通のことに思えますが、度を超えて生活や身体などに問題が生じるところまで依存症の行動を続けてしまうのはどうしてなんでしょう。

ひとつの理由としては、お酒やギャンブル、そしてゲームは、とても手軽に行うことができ、それが習慣化することで、ハマった対象でしか楽しみを得られなくなってしまうからです。本来、人間は三大欲求的なもの(食欲、睡眠欲、性欲)や、会食や旅行など様々な活動から快の感情を得ているのですが、それが特定のものだけになってくる。食事や家族との旅行に楽しみを感じられなくなり、ギャンブルやゲームなど“それだけ”になってしまうのです。会食するにはスケジュールの調整やお店の予約をしないといけない。服装のことも考えないといけない。家族との旅行であっても、ホテルや観光地を選んだり、そこで何をするか考えたりしないといけない。その点、お酒やギャンブルは手っ取り早くできてしまいます。

——依存している一つの行動でしか楽しみを感じられなくなるのですか?

これは、情動(喜び、悲しみ、恐れといった本能的な心の動き)に関係する島皮質(大脳皮質の一領域)のはたらきが弱くなっているからと考えられています。依存症の対象となる行動ばかりをしてしまうと、島皮質のはたらきが弱くなります。すると、本来楽しいはずの感情的な体験のセンサーが鈍くなってしまうのですね。

——なんと…島皮質は共感や社会性とも関連すると聞きますが…。

それもあるかもしれません。誰かといることに楽しみが感じられなくなり、ギャンブルやパチンコ、ゲームなどの個人プレイ(やオンラインでの疑似的な協力プレイ)それだけが唯一の楽しみとして残っていくのです。

どれだけ「面倒くさくできるか」が治療効果の決め手に

——依存症の治療は、どのように行われるのですか?

依存症の治療で1番効果的であるのは、認知行動療法に基づいたリラプス・ブリベンション(Relapse Prevention:再発予防)というアプローチになります。どういうときにやりたくなり、どうすればその状況を回避でき、そして対処できるのかを考える治療です。これは、お酒、タバコ、ギャンブル、ゲームなど対象は違っても共通して行われるアプローチです。

依存症の対象につい手が伸びてしまう、あるいは依存症のことをふと考えてしまう、その行動が始まるきっかけなどを細かくみていき、回避方法を考えるということです。これがうまくワークすると、依存症の対象から距離を取ることができます。

また、ここで重要なのは、いかに手軽にできないようにするかということなんです。

——「手軽にできないようにする」とは?

たとえばお酒なら冷蔵庫にはストックせず、都度コンビニで買うようにすると少し面倒くさくなります。女性なら家に帰るとまずメイクを落としたり、パジャマに着替えるようにする。そうすると、お酒を買うために、メイクをしたり、洋服に着替えるという面倒くささが足されます。

ゲームなら、スマホのホーム画面ではなく、もっと下の階層にアプリを置いておく、通信制限をする、スマホにきつくパスワードをかける、などが考えられますね。このような面倒くさいアイデアをいかに上手に、より多く考えていくかということは、支援の際には、心理職の重要な役割だと思います。

——その人に合わせて面倒くさくするということですね。でも、ゲームのアプリをスマホから削除しても、またすぐダウンロードしてしまいそうです…

確かにそうですが、小さくともダウンロードするその一手間、二手間が大事だと考えています。

というのも、依存症と向き合う別のアプローチとして、ゲームやギャンブルなど対象となっているものの“代わり”を見つけようと言われるのですが、さきほど脳のメカニズムでも触れましたが、島皮質が弱り、情動の感覚も鈍っていて「これしか楽しみがない」というなかで、いきなり読書をしましょう、家族との時間を増やしましょうと言っても、面白くないに決まっているんですね。

——確かに、ゲーム依存症の人がいきなり読書に切り替えるのは難しそうです。

先生に言われたから新しいことを始めてみたけれど、うまくないかなった…という失敗体験になるケースが多いので、それよりも、いかに出来ない時間を増やすかや、欲求を避ける方法を考えることが大事であると考えています。

——欲求を避ける方法をもう少し詳しくお伺いしたいです。

その人の生活スタイルを一つ一つお聞きして、火種を消していくイメージです。たとえば、仕事の終業時刻になるとパチンコをしたいという欲求がわいてくるなら、その時刻に家族に電話をかけてもらうようにして、電車に乗るまで話し続ける、という具合ですね。

うまくいかなかった場合はどう対処するかも含めて、その人の生活の中にもともとあることで、あまり無理をせずに対処出来ないかと考えていきます。

それで、完全には回避できなくても、週3、4日やっていたのを2日、1日にでも減らしていくことで、脳の島皮質の回復を期待するのです。

——先ほども出てきた情動に関わる島皮質というのは、回復するのですか?

実際の脳の回復については目で逐一見られるわけではないので、わからない部分もあります。ただ、依存の対象を避けられた期間は依存症的な脳の活動を抑えられるということは先行研究から明らかになっているので、少しずつ回復していくと言えるでしょう。

しかし、お酒やたばこといった物質への依存症と、ギャンブルやゲームといった行為への依存症とで、回復のスピードなどは異なるかもしれませんので、今後の研究でそういった回復プロセスが明らかになることは期待しているところです。

——スマホ依存など新しいジャンルの依存症が出てきていますが、新しい治療法などは生まれているのでしょうか。

依存の対象として新たなものが出てきても、根本的な治療は変わりません。最先端の手法というのはあまりないですね。他の依存症と同じように、その依存の対象に応じて、面倒くさくするための工夫をしていくことが必要です。スマホなら通信量を少なくするとかですね。

ちなみにスマホ依存とは少し違う話ですが、最近は自分が検索した履歴をもとに、関連情報が表示されますよね。競馬依存症の人が何気なくスポーツニュースを見ているとき、ポコッと競馬の情報が出てきたとします。「あ、G1レースもうすぐなのか」と思うと、もう「G1とかじゃなくて今日のレースがしたい!」とスイッチが入ってしまう。

つまり、ネットニュースを開くところが、依存対象物との接点の始まりだったりするんです。このようにスマホ依存を新しい依存症と捉えずに、やはり「どういうときにやりたくなり、どうすればその状況を回避でき、そして対処できるのかを考える」という基礎に戻ることが大切です。

一方で、スマホやゲームといったものは、もう我々の生活と切っても切り離せないくらい近い存在となっています。その意味では、これまでの治療を応用して、「いま」そして「これから」の依存症に対してもっと効果的な支援を考えていくことは、われわれの宿命だと思います。

「普通の会話」を取り戻すのが大きなサポート

——パートナーや家族が依存症になってしまった場合、周囲の悩みも大きいと思います。どんなふうにサポートしていけるのでしょうか。

嗜癖行動から抜け出すための要素として、周囲のサポートが重要であることは研究からもわかっています。依存症の当事者の話からも、間違いなく周囲のサポートはあった方がいいと思います。家族が連れ添って病院や自助グループへ行ったり、お金を使いすぎないよう管理したり、あるいは家で会話をすることも大事なサポートです。もちろん、依存症の当事者同士のよこのつながりも大事です。

とはいえ、サポートする側が難しさを感じることもあると思います。家族が重度の依存症になった場合、「家庭を壊した人と、どうして一緒にいなければならないのか」と感じるのも、ごく当然の心情です。別居や離婚をして依存症の当事者とは離れ、新しい人生を生きるというのも、周囲の方にとっては選択肢の一つだとも言えます。

——確かに、どこまでやり切れるかというのはありそうです。強い意志を持ってサポートしたいと思った時には、何が大事になってきますか?

長く依存症の方と向き合っていると、どうしても「また飲んできたの?」「今日もやったんじゃないの?」というような言葉がやむを得ず多くなってしまい、それに対して依存症当事者が攻撃的に出るというような苦しいやり取りになってしまうことは多いと思います。ですが、そうではなくて、可能であれば、普通の会話をすることが結構大事です。

——普通の会話、というと?

依存症になる前にしていた普段の会話というのでしょうか。依存症の多くは、楽しかったお酒やギャンブルが、いつのまにかストレス発散や現実逃避のツールとなってしまうことにそのきっかけがあります。ストレスのはけ口がたまたまお酒やギャンブルだったんです。子供や家族に顔を合わせたくないこともあったかもしれません。そうした時期に、お酒を飲んだりギャンブルをしたりするしかなかったのかもしれません。

だからこそ、普通の会話の中で愚痴を聞き、そもそものストレスを発散できるようサポートしてあげるのは、大きな意味があると思います。

——話すことで、ストレスが解消されるということですね。ちなみに、お酒などと同じように陥りがちな構造として、子供のゲーム依存の問題がありそうです。なにか良い手立てはありますか?

子供がゲームばかりしていると、つい「いつまでゲームをやってるの!」と言いたくなりますよね。

子供の場合は、親が子どものゲームを理解してあげようとするのが大事です。というのは、親自身がなぜ子供がこんなにゲームを好むのかわかっていないことが多いのです。これまで二言目には「ゲームをやめなさい」とか「本当に宿題したの?」とか、そういうやり取りばかりだったとしたら、それが家族の関係性を悪化させ、子供がゲームに走る要因になっているのかもしれません。ゲームは手軽にできるストレス発散方法の1つですからね。

あえてゲームのどこが面白いのか子供に教えてもらったり、一緒にやってみたりする、というのも嗜癖から抜け出す一つの手段だと思います。そして、ゲームで得ている面白いことや学んだことなどを、今度は逆に生活の中に落とし込めるか、を考えていくことが大切かもしれません。ここも支援する心理職がしっかりと考えていくポイントですね。

——なるほど。ここまでの話を踏まえると、周囲が厳しく指摘するようなコミュニケーションは依存症に悪影響なのでしょうか。

イライラさせられて、それを解消するためにまたやってしまう、というのはありますよね。せっかくゲームをやめたのに親の一言でイライラしてまた1時間やる…とか。イライラしたときに手軽にできるものが目の前にあれば、どうしても手が出てしまいます。

ストレスと嗜癖対象への行動というのはある程度リンクするので、やはりストレスがかかるのは良いことではないと思います。

これからの治療の可能性は「いかに上手に付き合うか」

——依存症を完治させるコツみたいなものはあるのでしょうか。

そこはとても難しい部分であり、課題でもあります。というのは、一時的に断つことができたとしても中長期的にうまくいかないことが多いですし、その人自身の「生活の楽しさを維持できるかどうか」という問題もあるからです

依存の対象物と同じような楽しさを獲得し、ストレス発散できる他の何かに転換できればベストですが、今のところ、なかなか簡単ではありません。特にゲームや動画サービス、SNSは没頭度が高いため、難しいですね。

——生活の楽しさを維持できなくなっては、結局依存を繰り返してしまう…

別のアプローチとして、ハームリダクション(Harm Reduction=問題の低減)という考え方があります。

楽しみたい。その一方で、関連する問題を少なくしたり、やらない期間を増やしていく、というせめぎ合いの中で、その対象との付き合い方を考えていきます

ギャンブル依存症の場合なら、普段1週間に一度、3万円使っている人に、「次のギャンブルは1万円使ったら終わってみてください。次の日にもう1万円やっていいから」というような話をします。で、その1万円で終わることができたかどうかを確認します。

ギャンブラーって、最初はこれだけと決めてお金をにぎりしめて行くのですが、負けたら、ATMでお金を引き出してしまい、それも負けるとまた少しだけ引き出して、と結局大金を使ってしまう、というようなことが続くんですね。3万円が結局5万円になるんです。この負けを追ってしまう行動のきっかけには「自分にとってちょっと手を出してはいけない金額を使ってしまったこと」があるように思います。

お酒の場合も同様に、普段通勤前と寝る前に飲んでいる人の場合、「とりあえず朝、飲むのをやめよう。夜はその分飲んでいいから」というような話をします。飲む量は変わらないけれども、それによって生じる問題を減らしていく、という考え方です。

——いかに問題を減らしていけるかということですか?

そうですね。あとは、依存の対象だけが楽しみになるリスクを回避するため、分散投資のように、いくつか楽しみやストレス発散方法を分けておくのもいいと思います。

ギャンブルするにしても、一つにこだわらず、麻雀や競馬などいくつかのものに分散してやったり、1人ではやらずに友達と一緒にやる、など。楽しみや興奮を分散して維持していると、結果的にひとつに依存しすぎることを予防できる場合もあります。

——“依存症=完全に断つ”という選択肢だけではなく、その対象とどう付き合うかを考えるというのは発見です。

お酒やタバコ、ゲーム、ギャンブルなど、それそのものが全て悪いわけではなく、ある種、人生の休憩所というような部分がありますよね。趣味の範囲でなら、それで救われたり、息抜きをしたりしてまた頑張れるということがあると思います。もちろん、依存症で自分や周囲の人々を傷つけるような状況なら、依存を減らしていくことが第一優先なのですが。

——依存症を治しつつ、良い部分は享受する。確かにそれがいちばん幸せですよね。

私はそこを大切にしたいと思っています。依存症についての研究はまだまだこれからです。最近では、ゲーム依存症の方とその支援者とともにワークショップを開催し、ゲームとの付き合い方の合格点を探していこうという試みも行いました。

お酒やゲーム、ギャンブル、そのプラスの面もマイナスの面もわかった上でどう向き合っていくのか。

これは人々の支援をその人の今の生活に基づいて考えていく公認心理師だからこそ、大切に考えていきたい視点だと思っています。依存の対象となるものに、いかに上手に付き合うかというのを大きなテーマとして、これからも活動していきたいと考えています。

依存症になれば完全に断つしかないというイメージだったので、そうではなく、どう付き合うかを考えていくというのは驚きでした。

人生がつまらなくなってしまうのはちょっと残念なことですよね。理想論的に聞こえるかもしれませんが、必要な支援をきちんと届けながら、生きる楽しみも維持できる治療を探っていきたいです。

(聞き手・編集:秦 正顕、撮影:齋藤 理、文:佐野 佳代子)

横光 健吾(よこみつ けんご)/川崎医療福祉大学 医療福祉学部 臨床心理学科 助教
博士(臨床心理学)、公認心理師、臨床心理士。同志社大学文学部文化学科卒業後、北海道医療大学大学院心理科学研究科修士課程、博士後期課程を修了。公益財団法人たばこ総合研究センター研究員を経て、2018年に立命館大学総合心理学部特任助教に。2021年より、川崎医療福祉大学医療福祉学部臨床心理学科助教に着任。ギャンブル依存症をはじめとする依存症の治療や予防に関する専門家として、オンラインカウンセリングやスマートフォンアプリを用いて、依存症の方々の支援を行っている。

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